老舗醤油蔵の若女将が 新感覚の甘酒を開発、 一躍話題の成長企業へ【浦野醤油醸造元】(下)遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

浦野醤油醸造元 若女将 浦野敦子 氏

鳥取県にて公務員の家庭に生まれる。
大学卒業後、大分県中津市内で働いていた時に縁あって醤油蔵に嫁ぐ。
持ち前の好奇心と行動力で甘酒をはじめ次々に新商品を開発し、時代にマッチした新しいスタイルの醤油メーカーへの歩みを始めている。


バリエーション豊富な『にじいろ甘酒』。
夏場のお中元需要をピークに福岡、小倉、関東方面などに出荷されている。

浦野醤油醸造元
創 業:文政年間(約 150 年前)
事業内容:醤油・味噌・各種調味料、生麹の製造・販売
本社所在地:福岡県豊前市
電話:0979-83-2326
ホームページ:https://www.urano-shoyu.com

福岡県豊前市でおよそ150年間にわたり「まるは醤油」の名で親しまれる醤油蔵。五代目当主のもとで若女将・敦子さんの売り出した『にじいろ甘酒』がヒットして話題となっている。

)からのつづき

若女将の思いを込めた『にじいろ甘酒』が大ヒット

こうした若女将のチャレンジの中から生まれた最大のヒット商品が『にじいろ甘酒』シリーズである。昔ながらの甘酒は10年ほど前から五代目女将・典子さんの手により商品として造ってはいたが、完全手造りの家内生産品で、少量を「道の駅・豊前おこしかけ」で売る程度だった。

「嫁いだ時に義母から造り方を習ったのですが、正直大変だなぁと思いました。大きなお鍋でおかゆのようなご飯を炊いて、それに麹を手でほぐしながら入れます。さらに練り過ぎないよう注意しながら混ぜて、50〜60度で一晩くらい保温すると出来上がりますが、それでも一回で瓶に30本くらいしか造れないんです。それを道の駅で売っていたのですが、当時は熱処理などの保存技術を知らず、賞味期限が短いので返品も結構ありました。好きな固定客はいるのでコンスタントに売れるんですが、手がかかる上に私自身もそれほど好きじゃないし、正直言っていまひとつ身の入らない商品だったんです」

それでも作っているうちにだんだん愛情が湧いてきたので、若女将は持ち前の研究心でどうすれば売れるようになるか勉強を始めた。甘酒は「飲む点滴」と言われるほど栄養価が高く身体にも良いが、独特の日本酒のような香りとドロッとした甘さが敬遠されがちで、若い世代では飲んだことさえない人が多い。 そこでインターネットや本で情報を集め、同世代の女性たちにも試飲してもらいながら、いろいろな造り方を試して工夫を重ねた。

最初に商品化したのは平成27年夏に発売した「福岡県産ブルーベリーの甘酒」だ。近郊農家から仕入れたブルーベリーを入れてみると、甘酸っぱくさっぱりした味と美しい色合いがマッチして、自身の好みにも合う納得の甘酒が誕生した。容器もこれまで使っていた大きな瓶ではなく、約300ccの可愛らしいサイズをチョイス。若い女性がお土産品や自分へのプレゼントとして選んでもらえるよう意識した。

さっそく道の駅に置いてみると、当時1本 600円の価格設定ながら発売直後から売れ行きは好調。若女将が狙った以上に、普段あまり甘酒を飲まない女性たちが購入していったのだ。


老舗の醤油蔵らしい雰囲気の店先。
醤油や甘酒を求めて遠くから訪れるお客様も増えている。

信用金庫のサポートで生産量が10倍に

手応えを感じた若女将は甘酒のバリエーションを増やすため、ブルーベリーに続く商品開発にも着手。「いろんな色の甘酒を並べたい」と思い、近郊の農産物を材料にいつもの試作を繰り返した。試行錯誤の末に「博多あまおう」や「八女抹茶」「くろ米」「米糀」「発芽玄米」などの商品化に成功。今では季節により入れ替えながら、トマトやスイートコーンなど年間12種類ものラインナップを揃えている。ネーミングも七色のイメージから「にじいろ甘酒」と変えて、ラベルもおしゃれなデザインに統一。こうして「甘酒のイメージを変えたい」という想いがこもった商品が平成28年春にデビューした。

発売後はあちこちのイベントや催事、インターネット等でPRしたところ、疲労回復や美肌効果がある商品が健康志向の女性たちに支持されて、大規模店やセレクトショップなど福岡市内を中心に次々に商談がまとまっていった。

しかし売れ始めたのは良かったが、新しい問題も出てきた。もともと甘酒は夏場にだけ作る季節商品の上、昔のままの設備で手造りしていたため商品供給が間に合わなくなってきたのだ。そこで福岡ひびき信用金庫に相談したところ国の「ものづくり補助金」の申請を勧められた。これは中小企業の新製品開発に必要な資金を国が補助するもので、信用金庫の助言を受けて申請資料を作成し、国に提出したところ、生産設備購入に必要な資金をサポートしてもらえることになった。

こうして導入した機械により、一度に造れる量は以前の10倍以上になった上、手作業で行っていた温度管理や衛生管理も飛躍的に安定させることができた。

「別の団体に相談しても動いてくれなかったけど、福岡ひびき信用金庫さんはすぐに対応してくれて、私の夢を真面目に聴いてくれました。おかげで今では月平均で約 千本を出荷しています」と、融資だけにとどまらず、顧客に寄り添ってサポートする姿勢に感謝している。


福岡ひびき信用金庫のサポートで導入した甘酒用の製造タンク。
生産能力は一気に10倍以上にアップした。

お客様のため、もっと大きく強い会社に

浦野醤油醸造元と福岡ひびき信用金庫とは、先代からずっとメインバンクとしてのお付き合いが続いている。若女将のチャレンジにも協力し、地域の顧客や取引先を紹介するなど応援してきた。さらに「にじいろ甘酒」の発売後は、福岡市で行われた「しんきん合同商談会」と北九州市の「ひびしんビジネスフェア」への出展を勧め、販路拡大のための新規取引先開拓をサポートした。若女将は展示会場で様々なお客様と出会い、話をするうちに、自分のやりたいことがクリアになってきたという。

「いろいろな企業の方が集まるので、中には最初から価格や条件面だけで話す会社もいます。しかし私たちからすると、生産者が大事に作った材料を分けてもらい、心を込めて仕上げた商品なので、そうした思いやストーリーをわかっていただけるお客さんとだけお付き合いしていきたいと思いました。商品コンセプトに賛同していただいたお店で、それに合わせた露出をしていただけば商品イメージも自然に上がっていくと思うんです」と商品への思い入れがさらに強くなったそうだ。

「しんきん合同商談会」で出会った企業とはその後数社と取引が決まり、現在甘酒を使ったジェラートの商品化に向けて商談が進んでいる。卸し先以外でも害虫駆除の会社と商談がまとまって年間契約が成立。工場の衛生面の改善に役立てている。

こうして「にじいろ甘酒」が大ヒットとなり、地域でも話題の会社となったが若女将にはまだまだたくさんの夢があるという。

「麹を使った新しい商品をもっと造りたいし、お店も改装して地域の交流の場にしていきたい。家族企業から会社組織にして生産力も上げ、浦野醤油のブランドをきちんと創っていきたいし、他にもやりたいことばかりです」と目を輝かす。若女将・敦子さんの才覚と行動力があ れば、そんな夢が実現する日もそう遠くはないはずだ。

おわり

この記事について

元気な中小企業は、地域の宝!
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