20円の駄菓子から1000円の商品まで 社長自ら始めた直販をきっかけに債務超過から奇跡の再生 【株式会社 大和製菓】(下) 遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役 吉川重光

株式会社 大和製菓
創業:1952年
事業内容:菓子製造販売
従業員数:53人
所在地:長崎県佐世保市大塔町2002-23
経営理念:駄菓子を通じて笑顔をつくる

価格が3倍のお土産に挑戦

最近力を入れているのは、「島姿」というお菓子です。硬めのクッキーに落花生を埋め込んで、九十九島の島影に見立てています。祖父の時代にお土産として売っていた商品で、当時は幅広く売れていたようです。これを復活させて、長崎銘菓にしようと動き始めました。単価は、味カレーの3倍の1個60円。お土産は箱入りで、5個入り300円、12個入り720円、18個入り1080円で展開します。付加価値を高め、利益をしっかり取っていくという形でやっていこうと思っています。コロナで出鼻をくじかれましたが、2~3年後にはある程度の形にしたいなと思っています。

この島姿という商品は、祖父の時代にはテレビコマーシャルもやっていましたし、ラッピングバスも走らせていました。当時の商品には島姿本舗と書いてあります。「味カレー」とは切り離したかったというか、別の売り方を意識していたのかもしれません。駄菓子屋というイメージでは売れないと思ったのでしょう。しかし、復活したところ、おかげさまで島姿にも手ごたえを感じています。コロナがなければ、もっと売れていると思います。

価格の高い商品への挑戦ということでは、「味カレーのやまとが監修 レトルトカレー」も販売しています。価格は1個540円です。今までずっと20円の駄菓子の商売しか考えていなかったのですが、このように500円とか1000円とかの単価の商売がうちにもできることが分かりました。

しかし、このレトルトカレーは挑戦でした。最初にこの商品を3千ロット作った時に、「これが売れんかったら、俺たち毎日毎食カレーば食べんといかんね」と弟と話しました。ところが、売れてですね。需要があると分かり、視野が広がりました。これからも、いろんなことに挑戦しようと思っています。楽しみです。

大手ラーメンメーカーと連携

サンヨー食品という大手のメーカーがあります。サッポロ一番というインスタントラーメンを全国で販売している会社です。このサンヨー食品が、「『やまとの味カレー』味焼そば」という新商品を作り、期間限定で販売を開始しました。最近のサンヨー食品さんは、他社のロングセラー商品や特定のエリアで根強い人気がある他社の商品などとのコラボを展開されていて、今回はうちの「味カレー」がコラボの相手として選ばれました。担当者さんから「『味カレー』は、50年以上に渡り愛されているロングセラー商品であると共に、カップ焼そばと相性の良さそうな独特の懐かしいカレー味が魅力的であったので、お声掛けさせていただきました」とご連絡があったのです。

全国展開の商品ですからね。うちにとってはよい宣伝になりますので、よい話だなあと思いまして、快諾しました。最初のロットがいきなり数万ケースです。

パッケージの前面にはうちのキャラクターのやまとくんが堂々と立って、基本的なデザインは「やまとの味カレー」のパッケージを踏襲してくださっています。前面の脇の方には「『やまとの味カレー』は昭和35年1月より販売実績のある株式会社大和製菓のスナック菓子です。」と明記されています。広告宣伝費と考えると、相当な金額になります。こういうコラボが、他の分野でも広がればいいなと思っています。

やまとくんが長崎県警の防犯ポスターになった

コラボといえば、長崎県警ともコラボしました。「大和製菓のキャラクターを使って、防犯ポスターを作りたいのですが」と県警から声がかかったのです。鍵を持ったやまとくんが3人、長崎県警のマスコットのキャッチくんと一緒に描かれています。このポスターは、長崎県の警察署や交番などの施設に貼られています。

うれしかったです。この何年かで認知がさらに高まったと思います。長崎新聞やテレビのニュースなど、県内のメディアには多数出ました。よい宣伝になっています。こういうことでも協力できるのはうれしいですね。天国の祖父が喜んでくれていると思います。

課題は機械化と生産性の向上

1番の課題は、やはり生産性を上げることです。そして、生産量を上げることです。個々の製造ラインの改善で生産量を上げるか、個々の従業員の生産性を上げるしかありません。

製造ラインの改善では、機械を新しくするしかないですね。それこそ、創業当時からの機械も使っていますから。機械屋さんに相談すると、工場自体を総取り替えした方がよいですよと言われるのですが、そうなると5億円くらいの投資規模になってしまいます。古い機械は壊れても部品を交換したり溶接したりして直せるのです。しかし、今の新しい機械はコンピューター制御なので、基盤がダメになったら直せない。ですから、直せるものは直しながら、新しい機械も取り入れていかなければなりません。

信用金庫さんからの補助金のご案内や、ものづくりの補助金などをうまく取り入れながら対応しています。毎年何かしらは変えて行きたいと考えています。ここ数年で、今後どうやっていくかという作戦を総合的に考えなきゃいけないな、と思っているところです。

【若林宗男のココに注目!】

単価20円の駄菓子・味カレーが今日まで続いていることが大和製菓の力の源泉だ。即席麺メーカー大手のサンヨー食品とのコラボや、長崎県警の防犯ポスターに味カレーのデザインやキャラクターが使われるというところにそれが表れている。こんなことになるとは、債務超過で引き継いだ時には想像もできなかったに違いない。その時に諦めず、食品団地での直販を自らが手掛けたことが大きな転機となった。土日祝日に食品団地やイベント会場で商品を売り続けると、売れることが分かる。経営者自らが、改めて商品と顧客とに向き合う機会となったのだ。そして、それは商品を購入する消費者の反応を具体的に体感した貴重な機会となった。商売は消費者が購入して初めて成り立つ。消費者と向き合う中で体感したことは、とても重要なことだった。

サンヨー食品とのコラボも、長崎県警の防犯ポスターも、大和製菓から提案したものではない。コラボの話はいつも外から来た。サンヨー食品の「『やまとの味カレー』味焼そば」のパッケージには、「長崎・佐世保生まれのロングセラー」「『やまとの味カレー』は昭和35年1月より販売実績のある株式会社大和製菓のスナック菓子です。」と明記されている。ロングセラー商品という認識は大和製菓にもあるが、内からの見え方と、サンヨー食品や長崎県警など外からの見え方は違うということだ。当事者には見えていない価値があることを、意識しておく必要がある。

大和製菓の社史を書くとすれば、食品団地での直販の開始を大和製菓の第2の創業と書くだろう。キャッシュフロー経営について、吉川社長が言葉ではなく体で感じたことが、起死回生に繋がったのだ。現金収入が売上全体の1割であるにもかかわらず、それが確保できたことで債務超過が解消され、経営が安定し、新しいことに挑戦しようという気持ちが社内に生まれたと語っている。この意味は大きい。このことを社長が体感したからこそ、食品団地での直販事業の取り組みを、大和製菓の第2の創業と呼びたい。

《ポイントまとめ》
商品の価値再発見により、新しい価格への挑戦が可能となる

1.味カレーという駄菓子のソウルフードを持っている。
2.高価格の商品開発への挑戦。
3.決めるのが早い。食品団地での直販、サンヨー食品との連携、長崎県警の防犯ポスター への協力、どれも即決している。このスピードはとてもよい。

(おわり)

この記事について

元気な中小企業は、地域の宝!
地域経済を牽引する数多くの中小企業のなかから、福岡・佐賀・長崎の元気企業を紹介します。
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