20円の駄菓子から1000円の商品まで 社長自ら始めた直販をきっかけに債務超過から奇跡の再生 【株式会社 大和製菓】(上) 遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役 吉川重光

株式会社 大和製菓
創業:1952年
事業内容:菓子製造販売
従業員数:53人
所在地:長崎県佐世保市大塔町2002-23
経営理念:駄菓子を通じて笑顔をつくる

駄菓子「味カレー」を作り続け、来年創業70周年(取材時)

長崎県佐世保市で、「味カレー」というスナック菓子を中心にお菓子の製造販売をしています。昭和27年創業で、来年70周年(取材時)を迎えます。祖父が創業して、父が2代目。私が3代目です。私は、今年社長に就任しました。

創業当時は問屋をしていました。創業から10年経ったときに、「味カレー」という駄菓子を作り、お菓子メーカーと問屋とを兼業でやってきました。おかげさまで、「味カレー」は全国で売られています。

債務超過で問屋を売却

実は、18年前(取材時)に問屋部門を切り離し、大手企業に売却しました。大手の問屋が地方にも進出してきて競争が激しくなり、当社が創業以来やってきた、地場のスーパーに商品を卸すという仕事が厳しくなっていたのです。

正直な話、ほとんど債務超過状態でした。当時私は仕入れの責任者でした。当時は問屋部門だけでも従業員は100人近くおり、売上は数十億円ありました。しかし、赤字が続いていました。大量に仕入れる全国問屋との競争になると、大規模な問屋の方が単価を安くできるので、地場ではどうしても勝てません。自分たちの商品なら自分たちで値決めできると考え、問屋を切り離して製造業だけにしたら生き延びられるかもしれないと社長である父に提案しました。このままだったら倒産してしまうから、問屋業を切り離して製造業を残そう、と。父は、跡取りのお前が決めるのなら反対はしないよ、と言いました。

しかし、製造業単独でも赤字だったのです。問屋をやめれば 製造部門だけになるため、人気商品の「味カレー」で儲けは出るだろう、と思っていたので参りました。それまでは私も問屋の仕事ばかりで、製造業の方に足を踏み入れたことがなかったのです。そこで工場の中に入ってみると、想像していたよりも衛生状況がよくない。ちょうど衛生管理などを徹底しなければならない時代になっており、ただ作ればよいという時代は過ぎようとしていました。例えば、大手さんが工場を見に来られた時に、これじゃちょっとプライベートブランドの話は難しいですね、と言われてしまいました。工場内部の環境の改善が必要だと。金もない上に、工場の設備も改善して、さらに売上も上げていくとなると、こりゃあ大変だなぁと思いました。ショックでした。

工場での直売に活路を見いだす

そんな時にテレビか何かで、工場の敷地でお客様に工場の製品を直接売るというのが流行っている、というレポートを見たのです。そこで、弟と一緒に近くの量販店で1万円のテントを買ってきて、直売を始めました。普通に売るよりちょっと割引したり、B級品を販売したりしました。そうしたら、売れたのです。なんと、初日から1日5万円とか10万円とかという売上があったのです。

それから、食品団地でビラを配ったり、近くの住宅街にチラシを配ったりしました。すると、金額は小さいですが、トントン拍子に売れていきました。1日5万円でも、30日やれば150万円になるのです。すごい手応えでした。平日は普段の仕事をして、土日祝日はテントを持っていろんなところに行きました。この辺ですと、早岐茶市とか愛宕祭りとか、休みなしでずっと販売をしたのです。すると、驚くことに1年目で黒字化しました。確信があってやったわけではないのです。もしも効果が出なかったら、私も腐ってしまって、もう会社はなかったかもしれません。しかし、たまたまやったことが当たりました。

この直販はとても大きかったです。全体の売上の1割程度の現金収入が確保できたおかげで、私たちも心に余裕ができました。今までは売上を目的に、この値段じゃ儲けが出ないという値段でも出したりしていましたが、そういうことがなくなりました。だから本当に良い効果が出て、残りの9割の方も利益がしっかり取れるようになってきました。1割があるおかげで、9割も生きるようになりました。

それまでは薄利多売でやっていましたが、最近では付加価値が高く、価格も高めの商品の開発に乗り出しています。例えば、地元の問屋さんと組んで地元の醤油を使った煎餅を作ったり、地元のアゴ(トビウオ)を使った煎餅を作ったりしています。そういう商品を、どんどん作れるようになりました。しっかり利益を取れる商品作りができるようになったのです。こういう企画や製造や営業が、少しずつですができるようになりました

問屋を売却してから18年が経ちました(取材時)。今はコロナで大変な面もありますが、去年までは順調に右肩上がりで進んできています。現在の年商は4億6千万円ぐらいで、従業員が53人ぐらいです。従業員の確保も昨年まではずっと大変でしたが、今は大丈夫です。面接をすれば、ある程度来ていただけるようになってきました。今年の社員は確保しました。来年、再来年に向けても、すでに人材は確保しています。

1番の売れ筋は「味カレー」

1番人気は、もちろん「味カレー」。その次は「かめせん」。長崎県内最大手の醤油メーカー・チョーコー醤油さんとコラボして、大村にある株式会社フルカワという問屋さんと組み、「チョーコー醤油のかめせん」という商品を開発しました。この商品の単価は250円。私たちが今まで売ってきたのは120円ぐらいの商品です。2倍以上の単価なのですが、それでも売れています。

私たちは、とてもよい勉強をしています。250円の商品が売れるのかなと思っていましたが、これが売れている事実。あご煎餅やうちわえび煎餅も、全部250円の価格帯ですが順調に売れています。生産が追い付かないぐらいです。テレビでも紹介されたので、一気に注文が増えました。テレビで取り上げられる効果も学びました。

(下)につづく

この記事について

元気な中小企業は、地域の宝!
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