老舗メーカーからの縫製を100%受注 いち早くベトナム人研修生を受け入れ 中小企業の連携で縫製業界の未来を拓く【株式会社 竹嶋繊維】(下) 遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役社長 竹嶋紀年

株式会社 竹嶋繊維
創業:1977 年
事業内容:縫製業
従業員数:33名
所在地:福岡県柳川市大和町皿垣開908-2
経営理念:縁尋機妙(仏教語で、縁が縁を呼んで幸福を招くの意)

(上)からのつづき

コロナ対策の医療用ガウン50万着を受注 九州の中小企業と連携して取り組む

ベトナム進出は苦い結論になりましたが、国内ではコロナ禍を受けて、大きなプロジェクトが動いていました。ありがたいことに、医療用のガウンを大量に作る仕事を受注することができたのです。あるところから、医療用のガウンを作ってほしい、国に協力してほしい、という連絡がありました。発注は50万着という規模です。当社だけではできませんので、同業社に声を掛けて手伝ってもらっています。しかし、これだけの量を作るとなると、残業もさせなければなりません。2020年から、中小企業にも時間外労働の上限規制が適用されることになりましたので、労働基準監督署に出向き事前に相談しました。

最初は理解していただけませんでしたが、「医療用のガウンが」と言ったら、表情が変わりました。差し障りのない範囲で説明すると、なるほど分かった、無茶なことがあるようだったら、事前にこうして相談してくださいと言われました。課長さんも出て来られて「柳川にもそういう会社があったとは知らなかった。うれしいことですから、がんばってやってください」と喜んでくださいました。

この日の労基署訪問では、3つのよいことがありました。1つ目は、この医療用ガウンの受注と生産について労基署が理解して応援すると言ってくださったこと。2つ目は、労基署の人が柳川に竹嶋繊維ありということを理解したこと。3つ目は、当社が正直な会社だということを労基署が理解したこと。伝えようと思ってもこういうことはなかなか伝わらないですから、すごくよかったと思います。

来年の3月(取材時)までの仕事は確保できました。当社だけではできないので、九州各地の縫製メーカーに声を掛けました。探してみると、九州の中に縫製業の会社はいっぱいあるのですね。昔からの知り合いというわけじゃないのですが、協力したいと言ってくれる会社がいくつも現れました。新しい出合いがあり、新しい連携が生まれました。

我が社の経営理念は縁尋機妙(えんじんきみょう)です。縁が縁を呼んで、幸福を招くという意味の仏教の言葉です。私に声がかかったご縁が更なるご縁を呼んで、一緒に仕事をする会社が増えたのはまさに縁尋奇妙です。ひとつの会社ができる量は限られていますから、バラバラに東京や大阪の大手企業と競えば、量で負けるのは目に見えています。でも、中小企業が集まりチームを組んでまとまった量を作れるようになれば、面白いことになると思います。

今回、各社をまとめて一度に50万着を引き受けられる実績を作れました。これは、大きな成果です。この経験と実績は、当社の貴重な財産です。

事業連携で開く中小企業の未来

当社は、主に婦人用下着を作ってきました。今回は、畑違いの医療用ガウンを作る仕事に出合いました。それも一度に50万着を納める仕事です。諦めずに取り組んでみたら、同業者の協力も得られ、労基署の理解も得られ、できてしまいました。

当社は日本を代表する下着メーカーの縫製を引き受けてきましたので、下着の縫製では自信があります。しかし、今回の医療用ガウンの仕事で、当社の縫製能力や縫製工程の管理能力を下着の世界だけに閉じ込めておいてはいけないのではないかと 思いました。1社だけで全てを行うのであれば、そもそも50万着の医療用ガウンの縫製という仕事は引き受けられるものではありません。しかし、九州域内の同業社とチームを組むことで可能になりました。

医療の世界の服装や小物を見ると、素材や色や形など、まだまだ工夫ができそうです。当社は生地や糸を調達する力は持っています。今回、医療用のガウンを作る仕事と出合うことで、医療用の品質の生地だって揃えることができると分かりました。もちろん、最先端の生地も揃えられます。そういうものを使って新しい製品を作り、医療の世界で売る仕事ができるような気がしています。下着は一枚一枚の単価が安く、ギリギリの利益を出そうと努力しています。一方、医療用の市場は、単価が高く利益率も大きいです。ターゲットも明確です。縫製業者が連携して、新しい市場を開拓できるのではないでしょうか。

私は昨年(取材時)75歳になりましたので、信金さんとも相談し、後継者を決めました。5年後には、現在代表取締役副社長を務めている三男を代表取締役社長にし、次男を専務にします。

私は、医療用ガウンの受注で出合った服飾関連市場で、九州の中小企業が連携して取り組めば面白い仕事ができるのではないかという夢の実現に向け、もう少し努力してみます。

【若林宗男のココに注目!】

竹嶋社長は、すごい挑戦者だ。淡々と、けれんみゼロで話をされるので、そのすごさが伝わりにくいかもしれない。

高卒で大阪の老舗大手メーカー福助に就職し、14年勤めて独立。株式会社竹嶋繊維を創業し、福助のインナー部門の縫製の仕事を全て受注した。竹嶋社長は「幸運なことに」と言っているが、32歳で独立起業したこと自体がすごい。その後も自社ブランドでの販売や、ベトナムでの製造に挑戦している。そして、それらの事業自体はうまくいかなくとも、竹嶋社長はきちんと引き際を見極め「いい勉強になりました。売るには売るプロがいます。当社は作るプロに徹することに決めました」と総括する。冷静沈着に現実を見つめ、すべての経験を無駄にせず次への挑戦の糧としているその姿勢は、やがて医療用ガウン50万着の受注へと実を結ぶのである。

50万着は、中小企業が1社で引き受けられる数量ではない。しかし、諦めずに同業他社との連携で取り組むことを決める。これも挑戦だ。ベトナムの合弁が続いていたら引き受けられなかったかもしれない。これも竹嶋社長が大事にしている縁尋奇妙と言えるだろう。中小企業が1社では引き受けられない数を複数社の連携で受注する取り組みは、もっと実践されてよい。竹嶋社長には、この複数の中小企業の連携をぜひ広めてほしいと思う。

《ポイントまとめ》
事業連携で開く中小企業の未来

1.蓄積された技術力と、20年前からベトナム人研修生を受け入れてきたノウハウを活かす。
2.1社だけでは捌ききれない仕事も、中小企業で連携することで取り組む。
3.中小企業が連携することにより、新しい市場を開拓することも可能となる。
4.仕事を融通し合うことで、経営が厳しい縫製業界全体を活性化している。

(おわり)

この記事について

元気な中小企業は、地域の宝!
地域経済を牽引する数多くの中小企業のなかから、福岡・佐賀・長崎の元気企業を紹介します。
中小企業経営者の波乱万丈の物語から、地域に愛される秘訣、世界に誇れる技術など、企業と地域を元気にするヒントがここに!