「捨てるから創るへ」廃棄物を資源として活かし「捨てるものは全て扱う企業」を目指す【株式会社 谷田建設 】(下) 遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役会長 谷田政行

株式会社 谷田建設
創 業:1973年
事業内容:産業廃棄物処理業、クレーン作業、解体工事業
従業員数:38名
所在地:佐賀県佐賀市大和町大字久留間3180-4
経営理念:価値あるすこやかさの創造

(上)からのつづき

佐賀の廃棄物を再利用し、新しい土壌改良剤を開発

佐賀県には農業用水路が張り巡らされており、そのクリークの維持工事の際に水草と浚渫土が出ます。実はこの水草と浚渫土が、埋め立ても焼却もできない厄介ものです。しかし視点を変えると、これは田圃とか畑の栄養の塊なのです。この水草と浚渫土を主原料として、土壌改良剤を作ろうというプロジェクトを進めています。まず水草と浚渫土、それから放置竹林の竹チップの粉に馬糞。佐賀県には競走馬のセカンドライフの施設があり、そこの馬たちは アマニ油の油カスが入った餌を食べています。水草も放置竹林も 馬糞も、そのままでは捨てるしかない不用品ですが、混ぜて完熟させると、とてもよい土壌改良剤になります。

農業用水路の水草は資源なのです。佐賀では不要で厄介者ですが、鹿児島や宮崎に行くと宝物になります。シラス台地や火山灰の痩せた土地を改良するのに使われています。

中小企業家同友会での学びが会社を変えた

平成29年に佐賀県中小企業家同友会に入りました。入会して、いかに個人経営だったかを思い知らされました。それまでは売上高が年間2億円台でしたが、入会した次の年に3億円台まで伸びました。その次の年は4億円台。2020年は、6億4千万円まで売り上げました。売上が伸びたのは、同友会での学びが大きかったからだと思います。

同友会に入る前は、会社というのは自分のものだと思っていました。気に食わないなら辞めていいよ、働く人は何人でもいる、とさえ考えていました。一人よがりの社長でした。

同友会で一番学んだのは、会社は社員さんとともにあるということです。社員さんの喜びがあってこそ、会社も成長できることに気付きました。彼らを道具と思っていた自分は、本当に浅はかでした。それまでは、労働問題は経営者が社員に話すべきことじゃないと思っていました。しかし今は、社員のリーダーの人たちに話すことによって、強い会社に変わっていっていると感じます。その強さが今の業績に繋がっている実感があります。

それから、同友会の会員が様々な事業に懸命に取り組んでいますので、そのネットワークも有益です。同友会には様々な業種の方がいらっしゃいますので、そこでいろいろなことが聞ける連帯感は強みですね。

「捨てるものは全て扱う企業へ」M&Aで一般廃棄物収集運搬業許可を取得

一口に廃棄物と言いますが、廃棄物には2種類あります。産業廃棄物と一般廃棄物の2種類です。産業廃棄物は、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物です。一方、一般廃棄物は、産業廃棄物以外の廃棄物で、家庭等から排出される一般のごみです。当社は、産業廃棄物収集運搬業許可は持っていますが、一般廃棄物収集運搬業許可は持っていませんでした。というより、一般廃棄物の許可は後からは取れないのです。ですから、一般廃棄物処理事業の許可を持っている会社と連携するしかないのです。

2021年は、解体工事業の受注が順調です。個人所有の空き家の解体が多くなっていますが、家の中に残されている残置物は一般廃棄物です。産業廃棄物として取り扱うことは違法なので、捨ててしまうか、一般廃棄物処理業者に処理を頼むしかありません。しかし、一般廃棄物事業者と当社が組めば、空き家の解体事業も家の中の残置物の処理も、当社がワンストップで扱うことができるようになります。

2020年6月に、一般廃棄物収集運搬業許可を持つミドリ環境保全株式会社をM&Aによりグループ会社化し、当社のグループ会社としたのはこのためです。ミドリ環境保全さんは、創業48年(取材時)、当社と同じ年に創業された会社です。優秀な会社でしたが、後継者に恵まれなかったのです。しかし、M&Aにより当社のグループ会社となることで、ミドリ環境保全株式会社という名前を残すことができました。M&Aがなかったら、廃業するしかなかっ たと思います。そうなると、働く人たちは働く場所がなくなってしまいます。価値ある会社を佐賀市に残し、雇用も維持するという意味ではM&Aは今後も絶対必要だと思います。

ミドリ環境保全さんを紹介してくださったのは、佐賀信金さんでした。お話をいただいてすぐに、お願いしますと返事しました。すると、面談希望リストに優先で入れときますねと言っていただいて、いの一番に話をさせていただきました。ありがたかったです。

「捨てるから創る」へ 環境循環型事業への挑戦

当社が一般廃棄物収集運搬業許可を持つミドリ環境保全株式会社をグループ会社化したことで、空き家の解体事業も家の中の残置物の処理も、ワンストップで扱うことができるようになりました。

当社の仕事は、お困りごと相談業と思っています。一般廃棄物を扱えるようになったということは、お客様の困りごとに対して対応できる方法が増えたことを意味します。これまでは、当社では一般廃棄物は扱えません、知り合いの業者を紹介します、と言うしかなかったのが、今では「任せてください。うちでやりますよ」と言うことができるのです。解体するとなったら谷田が引き受け、空き家の中の一般廃棄物のゴミはミドリ環境保全が片付けます。さらに、土地を活かすために不動産業にも取り組むつもりで準備をしています。谷田、ミドリ、新しい不動産会社の3つが、地域を守るひとつのグループ企業となって進めていきます。どんなグループ企業に変わっていくか、ぜひ見ていただきたいです。

中小企業は連携が重要です。一つひとつが小さいですから。でも、複数の中小企業が組めば大きな仕事も受けられます。私たちの身近な大手資本さんたちでも、合併する、連携するということをされているのです。大企業が合併しているにもかかわらず、私たち中小企業が単独ということでは、太刀打ちできません。中小企業同士が連携する、そして、案件ごとに協業する、そういう形に変わっていって当然ではないかと感じています。

【若林宗男のココに注目!】

谷田建設のユニークで面白いところは、建設業という作る業界から廃棄物処理業という捨てるを活かす業界に転換したことだ。谷田政行社長は2代目だから、普通ならば守る方を優先すると思うのだが、敢えて廃棄物処理業を伸ばす道を選んだ。その結果、現在の谷田建設は、廃棄物処理と解体工事、そして不動産業の3つの仕事をワンストップで引き受けられる会社に発展した。

元々は、農地の大規模化、集約化を担当する土木工事会社であった。谷田社長は、農地の大規模化もいつか終わると不安になったという。谷田建設の今日を考えると、この不安がプラスに働いたのは確かだ。その不安をそのままにせず、建設会社以外の道を考えたことが転機となった。谷田建設の場合、弟が現在を守る仕事を進め、兄が未来を創る仕事を探した。ひとつの会社で守りと攻めが同時にできたのだ。同時期に同じ会社に兄弟がいたことは、谷田建設の幸運だった。

時代は大きく変わり、捨てるを活かす時代が来ている。再利用、再生等、「再」がキーワードとなっている。SDGsも追い風だ。捨てるしかなかったものを活かす仕事は、これからますます必要になっていく。そしてそのニーズは、佐賀だけでなく、日本中、世界中にあるのだ。谷田建設には、ぜひこの分野のモデル企業となってほしいと思う。

ポイントまとめ》 
廃棄物を資源として活かす、環境循環型事業への挑戦

1.建築現場でのゴミに気付き、建設業界から廃棄物処理業へ転換。
2.廃棄物は混ぜればゴミ、分ければ資源。廃棄物を再利用し、ゴミを資源に変える社会づくりを目指す。
3.M&Aを活用し、後継者のいない企業を子会社化。また、中小企業家同友会での学びから、会社の改善を進める。

(おわり)

この記事について

元気な中小企業は、地域の宝!
地域経済を牽引する数多くの中小企業のなかから、福岡・佐賀・長崎の元気企業を紹介します。
中小企業経営者の波乱万丈の物語から、地域に愛される秘訣、世界に誇れる技術など、企業と地域を元気にするヒントがここに!