目指すはお客様から必要とされる鋼材屋 硬くて重い鉄の会社を支える、明るくて軽快な女性たち 【丸久鋼材株式会社】(上) 遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役社長 待鳥 寿

丸久鋼材株式会社
創業:1966年2月15日
事業内容:一般建築用鋼材・鋼板の卸売及び加工
従業員数:105名
所在地:福岡県久留米市太郎原町1498-1
経営理念:物づくり・人づくり

お客様のニーズに合わせて鉄骨建材をオーダーメイド加工

当社は、創業55年。鉄板を切って販売するところからスタートした会社です。その後、鋼材という建築資材の加工をするようになり、お客様のニーズに合わせて鋼材を切ったり、穴を開けたりという、鋼材の加工全般をやるようになりました。さらに現在は、溶接までやっています。溶接の職人さんが非常に少なくなってきていることが背景にあります。職人さんの減少や技術の進歩により、この10年ぐらいはロボットによる溶接の需要が非常に増えてきました。お客様の依頼に合わせて対応し、機械と業界が進化した結果です。

一方で、建物の耐震性能などの基準の変更を受けて、建築の規格品などの部材の数がかなり増えています。阪神淡路大震災の前と後では、建物の構造や材質はどんどん変わり、規格の変更や追加などで鋼板の種類が増えました。

当社は、高炉メーカーが作った大きな鋼板を仕入れて、お客様から言われた寸法に切断して納品します。また、設計事務所の設計図に合わせて、建物の骨組みの材料を加工します。骨組みの鋼材の太さや厚さによってもたらされる強度と、それによって仕切られる空間の広さとは、反比例の関係にあります。空間を広くしようとすれば、相対的に柱の太さや壁の厚さを小さくしなければなりません。こういう調整を鋼材の加工で行うわけです。当社にご注文くだされば、それに合わせて加工します。そして、それを建築現場で使う鋼材の加工や組み立てを専門に行う鉄骨加工業者、いわゆるファブリケーターに納品するのです。

電話受付担当の女性社員もお客様を訪問

当社の仕事は、高炉メーカーが作った鋼板を仕入れてお客様の要望に合わせて加工することですが、同業者はこの福岡県南部の筑後地区だけでも7社もあります。その中で、当社はお客様に選ばれる会社になろうと考えてきました。鋼板は高炉メーカーから仕入れ、加工する機械は機械メーカーの汎用品ということになると、どこで競争するのか、ということになりますが、営業が重要です。中でも、発注や問い合わせでお客様との接点になる、電話対応が特に重要と考えています。

お客様が当社の事務所に電話される時に、最初の対応が良ければ、繰り返し電話していただけます。明るい声で対応されると、気持ちがよいですよね。鋼材の仕事ですから、発注の電話をかけてくるのはほぼ全員が男性です。私自身、やっぱり対応のいい女の子に電話を受けてもらいたいと思いますので、お客様もそうかなと思います。

当社では、電話を受けた女性が、電話で話したお客様の会社に営業担当と一緒に訪問することにしています。そうすると互いに親近感が湧きますし、お互いに相手の顔を見て話をした結果、次に電話を受ける時にプラスになるようです。

今日(取材時)、当社に入られた時、受付が立ってご挨拶したと思いますが、会社が指示をしたわけではないのです。受付の女性を連れてお客様の会社を訪問した時に、その会社がそういう対応をされていたのを見て、自分たちもそれを取り入れようと話し合って自発的に始めたことです。最初にそれを始めた人は退社されましたが、今も続いているのです。

梱包でも他社と差別化

当社は、製品の仕上げと梱包にも力を入れています。仕上げと梱包は、激しい競争の中での差別化のポイントです。鋼材の加工は機械がやりますから、同じ機械を入れていれば差は出ません。では、何で差別化できるかと言えば、製品をきれいに仕上げて、きれいに梱包することです。梱包はすぐに解かれますが、きれいに梱包してあると、製品を受け取った時の印象が違います。梱包を開いて初めて製品を見た時に、製品がきちんと重ねて並べられ、一つひとつがきれいに磨かれ、そのまま組み立てられるという状態になっていれば、「お、やるね!」と思っていただけます。当初は気をつけるようにと言っていましたが、今では私が何も言わなくても気をつけてきれいに梱包するようになりました。

機械の進歩と、人と、データ

せっかく機械を入れるのだったら、2人で行っていた作業が1人でできるようになる機械や、夜間でも自動で動かせる機械などに入れ替えていきたいと考えています。お客様の要望に対応するためには、より効率のよい機械に替えていく必要があります。

もちろん、機械を導入すればそれで済むわけではありません。夜間に自動で稼働する機械は、それを動かすためのデータを事前に作っておく必要があります。当社が6年前に導入したレーザー切断機は、1枚切り終わると次のパレットが動いて、10段分のパレットを事前にセットしておくと夜間もずっと自動で動きます。しかし、夜間運転のデータを作る担当者が必要なため、人を補充しました。
そのレーザーの機械を最初に入れた時に、面白いことに気がつきました。最初は、その機械を担当するのは熟練のベテランがよいと思いました。でも、操作は全部タッチパネルでできるのです。30年のベテランがやろうが1年目の社員がやろうが、製品は同じようにできます。すると、給料の安い1年目の子に担当してもらった方がよいということになります。ですから、8年前までは社員募集は工業高校だけに出していましたが、今は商業科とか普通科の高校にも出しています。賢く働ける子どもなら、工業高校卒でも大学卒でも全く関係ないです。同じ機械を使えば同じ品物ができますから。

当社の工場の中では、30歳の女性社員が働いています。最初は営業のサポートや事務所への配属を考えたのですが、本人が工場の現場で働きたいと言ったのです。現場を見せてこんなに大変なところだよと言ったのですが、それでも現場で働きたいと言うので現場に配属しました。現場はものすごく暑いですから、大丈夫かな、4月に入社して夏を越せるかな、と思いました。けれども夏を乗り越えて、今でも続いています。鉄というと重たいですが、手でかつぐわけではないですからね。女性でも働けることが分かりました。今後は女性が工場の現場でもっと働けるような会社にしていきたいなと思っています。

実は、女性が現場で働くことで一番期待していたのは、男の社員たちがぼさっとしとったらいかんな、と思うようになることでした。当時、彼女が配属されたことで、周りの男性陣がちょっと明るくなったそうです。それは絶対あるでしょうね。男性陣も、女性には負けたくないという気持ちがあるので、刺激されて自然とよい効果があるかなと思っています。今は工場の女性は1人だけですが、2人3人と増えたらよいと思っています。

女性をもっと起用したいのは、優秀な女性社員の仕事ぶりに感心したのがきっかけです。実は、当社はベトナムのハノイに駐在員事務所を開設したことがありました。なぜハノイ事務所だったかと言いますと、ベトナム人実習生が非常に勤勉だったからです。ベトナムに面接に行った時も、前向きに働きたいという彼らの気持ちがひしひしと伝わってきました。一方では、新しいデジタルの工作機械が増えるにつれ、そういう機械を動かすためのデータ作りの仕事が増えて、残業が増えたのです。国から労働時間を削減するように、と言われておりました。そこで、ベトナムに事務所を作って、現地の人を雇って仕事をしてもらおうということになったのです。

データのやり取りもできてうまくいっていたのですが、駐在員事務所は商売をしたらダメだということが分かり、そういうグレーな状態で仕事をさせるのはよくないと判断して、私が閉鎖しました。所長を務めていたのは、久留米本社のCAD室で仕事をしていた女性です。彼女は帰国してから、どうすれば一番よいのかを考え、CADの仕事の働き方や無駄なことなどの整理をしてくれました。結局、久留米のCAD室に新しく人を入れて日本だけで対応できるようにしました。彼女は、今年取締役になりました。当社では初めての女性の取締役です。

(下)につづく

この記事について

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