倒産寸前からの復活を支えた介護事業 年間124日 業界一休みが多い会社が介護業界のデジタル化に取り組む 【株式会社 丸屋】(下) 遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役社長 家迫崇史

株式会社 丸屋
創業:1953年10月
事業内容:物品賃貸業(寝具類のレンタル&リース、福祉用具貸与事業、 介護用品の販売、介護リフォーム、通所介護事業)
従業員数:66名
所在地:福岡県春日市昇町3丁目164番地
経営理念:和の精神、愛の精神、誠の精神

業界一休みが多い会社

我が社は今、業界一休みが多い会社になりました。週休2日制で年間124日ぐらいは休日があります。お客様からも、丸屋さんは休みが多いねと言われます。社員も実感しています。同業他社から我が社に来た人は面接で、前の会社の終業時間は午後10時頃でしたと言います。そしたら私は、我が社では同じ仕事をやっていても、大体6時には帰れますよと言い返します。するとその人は「ありえませんよ。一生懸命やって10時、11時までかかっていました」と言います。私は、「働いて確かめてみてね。私は嘘は言わないよ」と話します。それから、もうひとつ私が決めているルールがあります。それは「出産に立ち会わない人は、クビにする」ということ。出産に立ち会える雰囲気を作りましょうとみんなに言っています。私も娘が3人いますが、3回とも立ち会わせてもらいました。当時の上司には、出産ごときで職場から離れるなと言われました。しかし、もう会社一辺倒の時代ではありません。社員には、家庭も大事にしてほしいと思います。

レンタル事業は最安値で、介護事業は速さで

5年前(取材時)から、お客様が思う当社の企業イメージと、当社の戦略を一致させていくことを追求してきました。私は、業界最安値でいこうと決めています。「丸屋さん、安いもんね」という評価をいただく戦略をこの5年間やってきました。

でも、ただ値下げするだけなら売上が減り、利益が減るだけです。じゃあ、どこでそれを補うかと言ったら、作業時間の削減です。介護施設は日々、コストダウンを考えています。箱ものですから、100人収容なら100人分掛ける1人当たりの売上しかないわけで、売上の天井は決まっているわけです。何とかして経費を下げたいということになります。そこで当社は、「うちは安くできますよ」と提案します。ただし、条件を付けます。「現在は、1階から4階まで全階にリネンを届けていますが、1階当たり1時間半かかっています。安くする代わりに、1階の1か所だけで、全館のリネンの回収と納品をさせてもらえませんか」と。そしたら、1回15分で終わります。これを時給計算すると、もう全然違います。これで、お客様は安いと感じます。その代わり、業務の改革を一緒にしましょうということを共有していただきます。当社だけでは改革は進まないからです。

介護事業の料金設定は、1割は個人の自己負担、9割は国の助成です。ベッド1台を7千円で貸したとして、個人負担は700円。利用者さんは、高い安いという感覚をそんなに持ちません。だから、ここで価格勝負をしてもあまり響きません。何が響くかと言えば、それはスピードです。在宅介護が現実になると、どなたもあたふたされます。「うちのおばあちゃんは明日家に帰って来るけど、ベッドも、手すりも、トイレも何もない。どうしよう」ということになるのです。その時に大事なのは、スピードなのです。だから、丸屋さんは速いよね、と言われるようにやろう、という戦略をずっと進めてきました。

介護点数の計算、集計、請求、支払いなどの作業のデジタル化を目指す

これからのことですが、まずは10億円の売上が目標です。現状の売上は年間7億円(取材時)、私が引き継いだ時は4億円でした。この3年間で3億円近くは伸ばせましたが、コロナのために営業のあり方や人とのコミュニケーションの取り方自体が変わってしまいました。訪問営業ができませんから、電話でアプローチできない新規の営業はやはり厳しいです。

そこで考えているのは、介護のデジタル化です。介護は、国のお金が9割入っています。介護の報酬の計算や請求の伝票をチェックする事務は大変です。ケアマネージャーが、それぞれの事業所が介護点数で何点分利用している、ということを記録していくわけです。それに基づき、介護マネージャーさんに点数分を請求します。それらを照合して、一致しないと入金されません。この作業のデジタル化を、全国の仲間と仕掛けていこうと考えています。介護事業は市町村単位で行われているので、国の事業でありながら市町村に丸投げ状態です。ですから、市町村毎にものすごく温度差があります。その上、市町村はデジタル化が遅れています。ここがデジタル化できると、効率がすごくよくなります。

事務員の時間を奪っているものがあります。電話です。どこからの電話が多いかと調べたら、なんと自社のスタッフからです。お客様ではないのです。「ごめん、ごめん。明日訪問するこのおじいちゃんのお名前、何でしたっけ」みたいな質問ばかりです。これに事務員はあたふたと対応しなければなりません。事務員が足りない、電話が足りない、となります。こんな非効率なことはありません。データベースを調えて、全員にタブレットを持たせて、銘々が自分で検索したら電話は減るのです。

デジタル化への対応ができるかどうか。これが勝負を決めると思います。私は43歳(取材時)のおっさんですが、社内DX化に向けてリーダーシップを発揮し全スタッフで取り組んでいます。

歩行訓練特化型のデイサービス事業の開始

2020年の2月に、通所介護の歩行訓練特化型デイサービスを開始しました。筋力の低下から老化が進むので、歩くことが非常に重要なのです。当社の利用者さんの事例ですが、オムツを着け布団で寝たきりで起き上がることもできないという方に介護用のベッドを入れると、背上げ機能で背を上げることで、足を自分で床に落とすことができるようになりました。さらに手すりを持って「よいしょ」と立てるようになり、トイレまでの導線に手すりを付けて環境整備をすると、歩けるようになります。寝たきりだった人の要介護度が改善するのです。こういうデイサービスを全国でフランチャイズ展開している、コンパスウォークという会社が埼玉県大宮市にあります。送迎して日帰りで通ってもらい、歩行訓練を中心に支援します。マンツーマンで付きっきりで個人指導しています。今までのリハビリ型のデイサービスとは、そこが大きく違います。

当社は、2020年の2月に提携しました。コロナのために営業開始が2020年6月になり、計画より4か月遅れました。これまで順風満帆で来ましたが、ここで今一度、経営の在り方とやり方を考えるタイミングだったのかな、と前向きに考えています。マンツーマンの付きっきりの指導で、筋力をつけ、歩けるようにして、トイレにも自力で行ける、元気な老人を増やすこと。それを実現したいのです。

【若林宗男のココに注目!】

株式会社丸屋は、布団のレンタルから介護用品のレンタルへ、そして介護事業へと短期間に事業の比重を変え、成長してきた。モノを「売る」よりも「貸す」を大事にすることは、顧客との関係を切らないで保ち続けることである。それは、デイサービス事業でも生かされているはずだ。

残業を廃止し、業界一休みが多い。やめるべき仕事を社員に提案させ、無駄な仕事をやめることにした。出産の立ち会いを奨励する。これらは今流行りの働き方改革のテーマだが、それをすでに実現しているのはすごいことだ。

そしてこれから、全国の仲間と業界全体のデジタル化を仕掛けようとしている。これができれば、介護業界全体の効率化が進む。丸屋は最安値で勝負する代わりに、お客様にも業務改革を求める。自社だけがデジタル化しても、効果がない分野があることを見抜いているのがすばらしい。

さらに、このコロナ禍で新事業をスタートさせている。介護の目的は、モノを売ったり貸したりすることではなく、元気な老人を増やすことであり、そのためには老人の筋力をつけ、歩く力を増やすべきだと明確に語る。そして、それを実現するために、マンツーマンの個人指導でサービスを開始しているのだという。将来的には自分もこのサービスを受けてみたいと思った。

ポイントまとめ〜時代にあわせて事業も働き方も柔軟に変化

1.事業部門の比重を上手に変えてきた。
2.残業を廃止するなど働き方改革を実践し、業界一休みが多い企業となる。
3.業界全体のデジタル化への取り組み。
4.歩行訓練特化型のデイサービス事業という新事業に着手。

(おわり)

この記事について

元気な中小企業は、地域の宝!
地域経済を牽引する数多くの中小企業のなかから、福岡・佐賀・長崎の元気企業を紹介します。
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