素人発想と玄人実行の精神 少量高品質の楽しいモノづくり 中小企業の連携を模索し商機を追求 【株式会社ナダヨシ】(上) 遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役 植木剛彦

株式会社ナダヨシ
創業:1981年6月5日
事業内容:精密板金、溶接加工、研磨一式
従業員数:20名
所在地:福岡県古賀市青柳194
経営理念:素人発想、玄人実行の精神とたゆまぬ技術の向上をもって 人に喜びを与えるモノづくりをし、地域社会に貢献します

コロナ禍で生まれたオンラインショップと新製品

当社は、古賀市に本社と工場があるステンレス・アルミ・チタン・鉄の金属の板を加工して製品を作る、板金加工製造企業です。冷凍・冷蔵輸送車等のフェンダーやバンパー等の部品、病院の手術室の空調機などの製造で実績を上げてきました。特に、一品物のオーダーメイドの受注が多く、顧客のほとんどは企業です。
一方で、2020年6月19日に個人消費者を対象としたオンラインショップを開設しました。販売しているのは、立体マスク製作用金型、刺繍用金型、刺し子金型、バターナイフ、ステンレスサッカーボール、ステンレス似顔絵など24種類で、古賀市のふるさと納税の返礼品にもなっています。ステンレス似顔絵は写真をもとにステンレスを切り抜いて作る切り絵です。

オンラインショップは立体マスクを縫うための金型から始まった

新型コロナウイルスの流行でマスクが不足していた2020年3月のある日、当社を担当している保険の外交員が世間話の中で「コロナで訪問営業の機会が減って、手作りマスクばかり作っているけれど型が上手に取れない」と話されました。布をマスクの形に切り取るのに使う型紙が使いにくい、と言うのです。早速、インターネットでマスクの型紙を探し、ステンレス板で試作してみました。試作した金型を外交員に渡したところ、外交員はそれを使って自宅でマスクを作り、「紙の型紙より使いやすい」との感想をいただきました。そこで、ステンレスでマスクの型を作って配れば、自分でマスクを作る人の役に立てるのではないかと思い、本格的に作ってみることにしました。当時は日本中でマスクが不足していましたので、世の中のためになるならとマスク用金型を希望者に無料で配ることを決め、4月中旬から配布を始めました。このことを西日本新聞が記事で紹介してくださり、その日から数日間は会社の電話が鳴りっぱなしになって、電話対応とメールの返信、製作と送付作業に追われました。BtoB取引しかなかった当社では、電話が鳴り続けるのは初めてのこと。当時従業員18人、うち事務員が2人という状況での電話の対応等は通常業務に支障をきたす結果となったため、4 月24日に配布終了を告知しました。配布枚数は全国47都道府県へ、2500枚以上になりました。

当社の経営理念は「素人発想、玄人実行の精神と、たゆまぬ技術の向上をもって、人に喜びを与えるものづくりをし、地域社会に貢献します」というものです。保険外交員の困りごとから始まった素人発想。優秀板金製品技能フェアで多数の受賞経験を持つ当社の技術者が、カタチにしたのが玄人実行。マスクの金型を無償提供することが社会貢献。マスク金型無償配布は世の中から見れば小さな活動ですが、このエピソードにはすべてが表れています。

6月に入り、テレビ取材の申し込みがありました。「市場からマスクが消えた時、裁縫用のマスク金型を配布してくれてありがとう」という内容の生中継番組でした。打ち合わせに来られたテレビ局のスタッフに配布終了の旨を伝えると、「料金を取ってもいいじゃないですか。欲しい方は買いますよ」と言われました。確かにそのころにはマスク市場も落ち着き、緊急性はなくなっていましたが、マスク製作をファッションとして楽しむための需要はありました。無償配布中にも売ってくださいとの声もあったことから、テレビ放送の中継に合わせて大急ぎでオンラインショップを立ち上げ、体制を整えた次第です。

ステンレスを加工して楽しみを創造する会社

当社は、ステンレス板金溶接加工で楽しみを創造する企業です。板金業界で最も権威があり、価値がある加工技術・技能のコンテストといえば、工作機械のリーディングカンパニーである株式会社アマダが開催している「優秀板金製品技能フェア(以下、技能フェア)」。1989年から32回開催されているこの技能フェアで当社は 17回大会から出品を重ね、24回の受賞を果たしました。最優秀賞である厚生労働大臣賞2回、中央職業能力開発協会会長賞1回、金賞5回、その他銀賞・銅賞など16回。工場横ギャラリーに数々の受賞作品を展示しています。展示作品の主なものは第22回で金賞・中央職業能力開発協会会長賞を受賞した「宝箱」。第27回に厚生労働大臣賞を受賞した「240面体」。第28回に銀賞を受賞した「ステンレス胡蝶蘭」。第30回に金賞を受賞した「ステンレス薔薇花束」。そしてたくさんの魚のオブジェなどです。

これらの作品は、いずれもステンレスの板を切って、曲げて、つないで、叩いて、磨いて作った当社の技術の結晶です。依頼主のためではなく、自分たちの技術を磨き上げるために作ったものです。より良いモノを作ろうと挑戦し続けることで、技術力も比例して向上します。そこにモノづくりの楽しさが詰まっているように思います。

)につづく

この記事について

元気な中小企業は、地域の宝!
地域経済を牽引する数多くの中小企業のなかから、福岡・佐賀・長崎の元気企業を紹介します。
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