地元愛が生んだヒット商品「ネジチョコ」 世界遺産登録をビジネスチャンスに グローバルニッチ戦略で未来を拓く【オーエーセンター株式会社】(下) 遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役社長 吉武太志

オーエーセンター株式会社
創業:1985年1月16日
事業内容:NTT代理店、NTTドコモ代理店、洋菓子製造・販売
従業員数:85名
所在地:北九州市小倉北区宇佐町 2-10-1
経営理念:地域に貢献、地域と共に発展

)からのつづき

海外のグローバルニッチを目指す

工場を作る前に、シンガポール、UAE、ハワイ州、カリフォルニア州などの催事で展示販売したことがありましたが、大変好評でした。日本のモノづくりに対する好感があるようで、クールジャパンを感じる商品として受け入れられたようです。そういうところに目を向け、海外市場に進出することを考えると、工場を新設してもよいと思えました。

ボルトとナットの形は万国共通だから、知財で守ることを考え、ネジチョコという商標登録と製造特許を国内で取得しました。海外でも10か国でチョコレートモルドボルトという商標を取得して、アメリカ、タイ、シンガポール、中国で製造特許の取得を申請中です。

コロナ禍で足止めを余儀なくされましたが、中国でインターネット販売する計画など、世界へ出て行く準備は着々と進めています。NPO法人として支援している小倉城のお土産屋「しろテラス」でゴールドや赤色のネジチョコを作ってバラ売りしたらすごく受けたので、アニメとのコラボで色付きチョコを中国で売りたいと考えています。

広告費をかけない戦略

ネジチョコの販売のために広告費はかけていません。今はテレビの時代じゃなくてスマホの時代、インターネット、SNSの時代ですから。2016年2 月のバレンタインデーに販売を開始した時も広告は使いませんでした。一方で、北九州市のご当地ヒーロー「キタキューマン」が投稿したツイートが人気に火を点けてくれました。大手が販売するチョコレートは1箱40グラム程度で税込み108円~114円。これに対して、ネジチョコはボルトとナット1個ずつが入った個包装8グラムで108円。この価格で勝負できるのは、カカオ分50%以上のクーベルチュールを原料に使っているからです。大手の商品とは質も価格もターゲットも違います。売り場の質も数も対象顧客も全く違うので、大量広告で売る大手と同じやり方では効率が悪過ぎますから。

地元愛と地域への貢献

私が代表を務めているNPO法人ノースナインは、公害の死の川から復活した紫川で毎年開催されるようになったトライアスロン大会を支援し、小倉城の指定管理者にもなっています。現在は、北九州市立大学の3年生のゼミと連携して、規格外のフルーツを美味しいスイーツにしようとして動いています。長年のNPO活動を通じて、社会課題の解決に企業が役割を果たすことが期待されていると感じますが、ネジチョコが生まれたのもこのNPO法人があったからです。ノースナインには、私たちと働きたいという学生たちが参加してくれています。NPO法人は重要で、成長のカギだと思っています。NPO法人を活用しながら社会課題の解決と会社の事業をウィンウィンで成長させていきたいですね。

NPO法人だけではなく、福岡県のサーフィン協会の役員や門司ゴルフクラブの委員、福岡県のトライアスロン協会の理事なども務めさせていただきましたが、会社の社長としての活動だけでなく、会社の外の活動にも力を入れています。というより楽しんでいるだけですが(笑)。

こんなふうに活動ができるのは、インターネットのおかげで、どこにいてもコミュニケーションができるようになったからだと思います。社外の活動をしていても、メールのチェックはマメなぐらいしています。返信も早いので、社員に不便や機会損失は与えていない自信があります。業績が上がらなければ何をやっているんだということにもなるので、しっかりやりたいと思っています。地域貢献活動などは、社長が関わると社会的なインパクトが大きくなります。こんなふうにマルチに動けているということが、クライアントであるNTTとNTTドコモからも理解され評価されていると感じます。

私は、自分のハッシュタグはたくさんある方がよいと思います。チャレンジしたいことがあれば、会社の給料を75%にして25%は自分の好きなことをしたらよいとも思っています。社員にもそうしてほしいと思っていて、社外の人を一人入れて、モデルになってもらいたいと考えています。みんなが刺激し合うような会社にしたい。会社の外でがんばって活動して、その成果を会社の中に返していくような仕事の仕方ができたらいいなと考えています。なので、社員の副業を奨励しています。社外のいろんなネットワークが会社にプラスをもたらしますから。

NTTとNTTドコモの代理店としてできることは限られていますが、飲食部門は自分たちのブランドなので好きなようにできます。一方では、NTTのeスポーツやNTTドコモのレンタルサイクルなど、行政とつながることで前進する分野がありますから、NTTとNTTドコモと、行政とのつなぎ役とも言えるかもしれません。NPO法人で地域活動をしていることも、確実に会社の事業のプラスになっています。

地域への貢献も続けていきたいと思っています。ネジチョコは北九州の人の応援で生まれました。今後は、地元の大学や高専との産学連携をもっと進めていくつもりです。産学連携では、地元の大学生と連携して鮨まろという商品の開発を進めています。これは、お寿司の形のマシュマロとチョコレートのコラボ商品です。2019年から取り組み、すでに商標は押さえました。かなり好評で2020年の春から売り出す予定でしたが、コロナ禍で発売を延期し、10月に発売しました。

コロナによる停滞もありますが、注目すべきことは価値観が変わってきたことだと思います。みなさん、移動することの無駄というものを以前より大きく感じるようになったのではないかと。だとすれば、地方都市には有利に働くはずです。できる会社は、東京から離れることも考えるのではないでしょうか。北九州市は災害が少ないし、地震も少ない。だからチャンスがあると思います。

【若林宗男のココに注目!】

オーエーセンターが本社を構える小倉は、長崎の出島に入った砂糖を運ぶシュガーロードと呼 ばれた長崎街道の終点であり、和菓子屋が多い。和菓子職人は、木型を使う。

吉武社長は、木型、金型を飛び越えて、いきなり最新の3D技術を使った。シュガーロードの伝統から完全に非連続なモノづくりだ。ここを連続にしていたら、ボルトとナットの組み合わせをお菓子の世界で作ることはできなかっただろう。吉武社長は「素人だからできた」と笑うが、固定概念にとらわれない発想と新技術の融合がときにイノベーションを起こす好例であるだろう。

また、客商売では子どもをつかむのが重要だ。子どもの時に親近感を持ったものは大人になっても親近感を持ち続ける。しかも、子どもは消費者としての寿命が長いのだ。さらに、形の面白さだけでなく、チョコレートの品質にまで徹底的にこだわった結果、高単価でも売れる、リピートされる、といった強みにつながり、ネジチョコに競争力を与えている。

ポイントまとめ〜新技術、社会課題、地域貢献の組み合わせで、ニッチな土俵で勝負

1.3Dプリンター、IOT、デジタル化、デザイン志向など、新技術、新潮流に敏感であり、使いこなしている。
2.広告費をかけずに、メディアの取材やSNSを効果的に活用している。
3.グローバルニッチ市場を狙うことと価格設定、品質、対象顧客が適合している。
4.社会課題の解決に企業が果たせる役割があることを理解し、NPO法人と企業活動の両輪でウィンウィンの関係を築いている。
5.産学連携や行政との連携などに積極的に取り組んでいる。

(おわり)

この記事について

元気な中小企業は、地域の宝!
地域経済を牽引する数多くの中小企業のなかから、福岡・佐賀・長崎の元気企業を紹介します。
中小企業経営者の波乱万丈の物語から、地域に愛される秘訣、世界に誇れる技術など、企業と地域を元気にするヒントがここに!