地元愛が生んだヒット商品「ネジチョコ」 世界遺産登録をビジネスチャンスに グローバルニッチ戦略で未来を拓く 【オーエーセンター株式会社】(上) 遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役社長 吉武太志

オーエーセンター株式会社
創業:1985年1月16日
事業内容:NTT代理店、NTTドコモ代理店、洋菓子製造・販売
従業員数:85名
所在地:北九州市小倉北区宇佐町 2-10-1
経営理念:地域に貢献、地域と共に発展

世界遺産登録から始まった北九州市ならではのお土産づくり

弊社はネジチョコというお菓子を作っています。文字通り、ネジの形をしたチョコレートです。ボルトとナットの組み合わせで販売しておりますが、本物のボルトとナットそっくりの形で、本物同様、実際に締めたり外したりできるんです。販売開始から5年が経ちますが、おかげさまで品薄になってしまうほど、今では北九州市の新しいお土産としてすっかり定着したように思われます。

北九州市小倉北区に本社を構えておりますが、実は弊社の主たる業務はNTT西日本(株)とNTTドコモ(株)の代理店で、携帯電話など通信機器を販売しています。
通信機器を販売する会社が、なぜチョコレートを作るようになったのかと申しますと、世界遺産登録と関係があります。2015年7月、官営八幡製鐵所関連施設を含む「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録されたのですが、9月に 北九州市から世界遺産のお土産を作らないかと声がかかったのです。

というのも、私はオーエーセンターの事業とは別に、2011年に立ち上げたNPO法人ノースナインの代表を務めておりまして(ノースナインは「北九」の英訳)、本業の傍ら、北九州市の地域活性化に取り組んできました。一方、ドコモショップを新規開店する際に直営のケーキ店を隣に併設して飲食事業部を運営してきたこともあり、市から声をかけていただきました。

話を聞いてすぐに登録されたばかりの世界遺産を見に行きました。ところが、折角の世界遺産登録なのに、北九州の世界遺産にふさわしいイメージのお土産がないのは悔しいと思いました。当時は、人材不足もあってドコモショップの成長の限界を感じ、メーカーにならないといけないなと思っていた時期でもあり、メーカーになれるかもしれないと思ってチャレンジすることにしました。世界遺産のロゴが使えるという条件も魅力的でしたね。

どういうお菓子が世界遺産登録の八幡製鐵所関連施設のお土産に相応しいか、いろいろ考え、「昔から製鉄所がある北九州は“鉄の街”のイメージが強い。鉄をモチーフにしたお土産を創ろう」と考え、ボルトとナットに行き着きました。

3Dプリンターでチョコレートの型を作る

近代的な工場でお菓子を大量に生産しようとすれば、金型で作るのが普通ですよね。しかし、金型は製造期間が1か月以上かかり、費用も50万円はかかります。さらに仕様変更なども業者に頼むしかなく、時間も費用も余計にかかります。そこで私は、3Dプリンターで型を作ることを考えました。3Dプリンターなら型の製造にかかる費用も10万円弱。一週間で開発できるし、仕様変更はPCでいつでもできる。むしろ、どうして使わないんだろうと思ったぐらいです(笑)。

とはいえ、そう簡単な話でもなく、例えばネジ山の角度については試行錯誤がありました。締めたり外したりできるのが面白いので、締まり過ぎて抜けなくなると面白くない。ネジ山の頂点に丸みを付けると外しやすくなることが分かったので、ネジ山の頂点を丸くしたRネジにし、特許を取得しました。これを金型でやっていたら相当高くついたと思います。

3Dプリンターで型を作ることにした結果、地元の工業大学や高専などと関係ができ、産学連携を進めることもできました。3Dでのコラボやインターンの協力も得られるようになりました。

お客様が見学できる工場を作る

2015年9月にアイデアが固まり、ネジチョコを作り始め、2016年2月のバレンタインデーに発売しました。販売前からメディアに取り上げられたおかげで売り切れが続出し、手に入らないチョコレートとして注目され、SNSで拡散されました。生産拡大を意識して2016年夏にはドコモショップの2階に簡易的な工場を作り、当時は20人が手作業で1日に8千個を作っていました。

しかし、型からチョコレートを抜くのが大変で腱鞘炎になる人が続出しました。手作業を省くために自動化しなければと思っておりましたが、2018年末にようやく自動化の目途が立ち、補助金も得ることができました。そして、2019年に新しい工場を建てました。

新工場はラボラトリー(実験室)と名付け、明るい塗装にしています。初めから、お客様を工場に受け入れ、チョコレート作りを見学したり体験したりすることを想定してデザインしました。地域のお子さんたちに来てもらいたい、良い思い出を作ってもらいたい、お客様が3Dプリンターを使って自分でチョコレートを作り、お土産に持ち帰ってもらいたい。そう思って、デザイナーを入れて色遣いも工夫しました。経理部門からは工場にお金を掛け過ぎと言われましたが(笑)、妥協はしませんでした。子どもたちが見学に来て楽しんでくれて、次世代の消費者になってくれれば、これが後で生きてくるはずと考えていましたので。

それと、小さいときの味覚は記憶に残ると考えて、カカオ分が50%以上のクーベルチュールを使っています。クーベルチュールというのは、洋菓子専門のパティシエが使うチョコレートの原料で、良質で濃厚なチョコレートです。「形が面白いからチョコレートの質は関係ない」という意見もありましたが、ここもこだわりを通しました。エモーショナルスイーツ、感情を揺さぶるスイーツ、共感を呼ぶスイーツ。そういうスイーツを作りたいと思ったんです。

工場では今も改善が続いています。私が目指す工場は、100%自動化された、人の手を必要としない工場ですが、現状の自動化率はまだ70%程度です。オーナーパティシエが作るのではないので、だれでも仕事ができる工場が必要なのです。

)につづく

この記事について

元気な中小企業は、地域の宝!
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