海の中にビジネスチャンスを求めてデジタル技術で海を拓く現代の匠たち コロナ渦の前からテレワークを実践【コスモ海洋株式会社 】(下) 遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役 金丸市郎 / 専務取締役 金丸哲士

コスモ海洋株式会社
創 業:1992年6月1日
事業内容:海洋測量調査・探査・海洋土木工事
従業員数:30名
所在地:北九州市門司区栄町11-9
経営理念:誰からも信用される業務の遂行と信頼されるお客様へのサービス

(上)からのつづき

危険と隣り合わせの海の仕事は安全第一

新入社員は潜水士の資格を保有し経験があっても、すぐに潜って作業することはありません。最初に覚えることは、船上から潜水士をサポートする「上回り」という仕事です。

岸壁や船上にいて、潜水作業をしている潜水士との連携作業を習熟させます。
社員教育で徹底していることは安全研修です。何かあれば人命に直結します。特に潜水作業は自分の命を自分で守らなければいけませんので、何か起きたときにパニックにならず、いかに冷静でいられるかが大事です。2021年6月には、会社創立30年を迎えますが、幸いなことに今まで大きな事故は起きていません。現場の朝礼では、どういう危険があるのか、ケガしたときや潜水病に罹った場合どこに連絡して処置したらよいのか等を、作業に従事するすべての人に周知して現場に臨んでいます。潜って作業する人、船上で作業をする人は現場の危険性(リスク管理)について熟知していることが大切です。

アットホームな職場

仕事をする現場は全国津々浦々で出張も多く、30人の社員が顔を合わせないことも多いので、懇親を深めるため2年に1回は2泊3日の社員旅行をしています。旅費はすべて会社が負担し、旅行中の小遣いは社員が毎月給料から積み立てる仕組みです。旅行前日に従業員に積み立てた現金を手渡ししています。旅行に行ってもお小遣いが無いとつまらないですもんね(笑)。行き先は社員のアンケートで決定します。仕事柄、海は見飽きているので、行き先は海無し県が多いですね。

社員の年齢は、下は22歳から上は85歳までと幅広く、アットホームな雰囲気で「おじいちゃん、お父さんお母さん、お兄ちゃんお姉ちゃんがいて、弟と妹がいる会社です」と先日、若手社員が言っていましたが、うまいことを言うなと思いました。

また、北九州市が認定する道路サポーターにも会社ぐるみで取り組んでいます。会社のそばにある門司港レトロ地区では土日にイベントが多く、毎週月曜日に社員全員で会社の前面道路230mを主として道路のゴミ拾いを行っています。この活動が評価され、2019年に北九州市より道路サポーター活動10年表彰を受けました。北九州市の隣町、苅田町でも清掃活動に参加しています。地元の人との交流も仕事には大切です。弊社はいろんな場所で仕事をすることが多いので、その土地の方と顔見知りになっておくと、現場で協力を得ることができるので、地域貢献の一環として清掃活動を行っています。

良い仕事を仕上げてきちんと終わるのが最高の営業

社員は30人ですが、弊社には営業に特化した人材はいません。良い技術を提供してお客様に満足していただけることが最高の営業です。あの時の仕事のせいで新しい仕事が来なくなったと思い当たるような仕事をしないことが大切です。技術者には「あなたたちがしっかりと技術を磨いて良い仕事をしているので、お客様からまた声を掛けてもらえる。だから、わが社には営業専門の社員は必要ない」と言っています。弊社の強みは信用と信頼です。

社内の風通しは良く、社員それぞれに個性があって若手が自由に発言する空気があります。経営者は聞き役に徹すれば良いのです。発言すると責任も出ますから(笑)。「自由に発言できるからみんな会社を辞めないのかな」と専務(金丸哲士氏)は言いますが、社員が好きなことを言えて、それを叶えられるようにするのが経営者の仕事だと思っています。

これからの展望

最近では海外での仕事も年2~3件は入るようになりました。ケニアでは地元の人に測量機器の取り扱いや技術指導をしながらJICAの技術支援の仕事にも携わっています。

今後はさらに我々の技術を生かし、世界にも目を向けて様々な国で活躍できるように邁進したいと思っています。これから測量調査技術を学び、港湾建設などに取り組む発展途上国の人々に技術支援を行いながら、自分たちの手で作れるように指導していきたいです。

海外での仕事は、弊社の技術者にとっても自分たちの技術力を確認できるので、非常に有意義です。

【若林宗男のココに注目!】

コスモ海洋株式会社は、海の底に豊かなビジネスチャンスを見つけた会社だ。元々は、関門海峡に残っていた第二次世界大戦の機雷や砲弾などの危険物を見つけるための磁気探査をする会社だった。それが今では、危険物探査だけではなく、海洋測量調査や海洋土木の会社として発展している。創業から30年になるが、赤字になったのは一度だけ。ずっと右肩上がりの成長を続けてきた。関門海峡の浚渫工事や北九州空港の埋め立て工事などで実績を上げている。

企業経営を分析する手法に3Cがある。カンパニー、カスタマー、コンペティターの頭文字のCだ。これらの重なりの中で、競争条件や優位性がある市場を分析するのだ。コスモ海洋の特徴は、競争相手が少ないこと。陸上の測量調査、土木工事会社に比べるとはるかに少ない。金丸市郎社長は言う。「同業者は少ないですよ。 10社ぐらいでしょうか。創業当時とほとんど変わっていません」

新しい仕事を始める時、客はいるのかね、と聞く人は多い。客が多ければ成功する確率が高いと思う人は多いが、本当にそうだろうか。コスモ海洋の金丸社長の話を聴いていると、競争相手も客も少ないことが成功のカギだと分かる。客が少なくても、客が支払う金額が多ければ売上は大きくなる。売上は、客単価×客数だからだ。競争相手が少なければ希少価値が高くなる。顧客は個人ではなく企業や官公庁である。1件当たりの金額は大きい。さらに客が少ないということは、多くの顧客に営業活動をする必要がないことになる。これらがコスモ海洋の強みであり、成功の理由だ。同業者は全国47都道府県で10社。その真ん中で存在感を示している。

ポイントまとめ〜強みは競争しないこと

1.競争しない会社を目指している。「人の行く裏に道あり花の山」になぞらえれば、「人の住まぬ海の中こそチャンスの宝庫」。
2.他社に先駆けて最新機械を導入する。これも競争しない戦略。
3.海外の仕事を発展途上国に求める。発展の伸び代が大きい国々を応援する。これも競争しない戦略。

(おわり)

この記事について

元気な中小企業は、地域の宝!
地域経済を牽引する数多くの中小企業のなかから、福岡・佐賀・長崎の元気企業を紹介します。
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