海の中にビジネスチャンスを求めてデジタル技術で海を拓く現代の匠たち コロナ渦の前からテレワークを実践【コスモ海洋株式会社 】(上) 遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役 金丸市郎 / 専務取締役 金丸哲士

コスモ海洋株式会社
創 業:1992年6月1日
事業内容:海洋測量調査・探査・海洋土木工事
従業員数:30名
所在地:北九州市門司区栄町11-9
経営理念:誰からも信用される業務の遂行と信頼されるお客様へのサービス

磁気探査から海洋測量調査、そして海洋土木工事へ

創業は1992年です。海洋探査の仕事で10年、海洋測量調査と海洋土木工事の仕事で10年、合計20年間サラリーマンとして働いた後、友人と二人で起業しました。

会社設立時、関門海峡は第二次世界大戦終了後に遺棄・投棄された機雷や砲弾などの危険物が相当数残っており、これを見つけるための磁気探査の仕事に目を付けました。

機雷や砲弾の処理は航海の安全を確保する作業であり、国の管轄になりますが、我々の仕事は磁気探査でこれらの物が海底に在るか無いかを調査することです。探査用の台船から磁気探知機を海底に下ろし、反応があった場所を特定し、潜水士が潜ってその有無を実際に確認します。機雷や砲弾を見つけた場合は、海上自衛隊が処理しますので、見つけるまでが我々の仕事です。また、潜水士は機雷や砲弾だけではなく、岸壁や船から海に投棄された家電やスクラップくずなども見つけることがあります。それらは船舶の航行や工事などの妨げになるので、事故につながる恐れがあるものは船上に引き上げ、産業廃棄物として処理します。磁気探査後に危険物や磁気反応物がないことを確認して、初めて浚渫(しゅんせつ)工事が行われます。さらに浚渫工事完了後、深浅(水深)測量をして海図を作成し、航路の水深が確保され安全に船舶が航行できるよう、海洋測量調査も行っています。このようにして弊社は磁気探査から海洋測量調査、海洋土木工事へと業務の分野が広がっていきました。当初は、公共工事に伴う仕事はC、Dのランクの仕事が多かったのですが、最近では、Aランク(= 1件当たり億単位の仕事)の仕事も受注できるようになりました。

自己資金500万円で起業

創業は、会社勤めで貯めた自己資金500万円と友人の100万円を元手に有限会社としてスタートしました。脱サラをして起業したものですから金融機関とのお付き合いはどうしていいか分かりませんでしたが、知り合いの会社の社長が門司信用金庫(現:福岡ひびき信用金庫)と取引があり、紹介していただきました。設立当初は従業員も少なく、私は現場作業に追われていました。そんな時、門司信用金庫の担当の方に経理面で様々なサポートをしていただき随分助かりました。そのフットワークの良さに感心したことを今でも覚えています。起業してから10年間は順風満帆でしたが、10年目に取引先が2社倒産し1500万円の赤字を抱えることになりました。倒産防止協会からの支援と自己資金でなんとか乗り切ることができましたが、本当に大変でした。しかしこれが私の大きな教訓となり、取引先を大手マリコンやコンサルに切り替えました。

ハイリスク・ハイリターンの海の仕事でもデジタル化が威力を発揮

海の仕事は危険と隣り合わせです。雨でも仕事はできますが、風は天敵です。強風により高波になれば作業船は出港できません。作業船が出港できなければ待機になります。我々の仕事は官公庁が発注する公共事業が主なので工期が決まっています。工期内に終わらなければ、次の工事や調査に進めないので、天気の回復を待って効率よく仕事を行うしかありません。このようにハイリスクな海の仕事の世界ですが、デジタル化が進み随分と仕事がしやすくなりました。例えば、創業時、深浅(水深)測量などは、取得したデータは記録紙に印字され、これにスケールをあてて数値を読み取り、専用ソフトに入力して図面化していたので、成果物ができあがるまで数日かかっていました。現在は取得した水深データを現場からインターネット回線で伝送し、事務所にいる技術者が専用のソフトウエアに読み込ませて図面化することにより、現場作業と並行しながらデータの解析を行っています。極端なことを言えば、現場作業が終わった技術者が事務所に戻る移動中に、別の技術者がデータ解析処理を行なうため、戻った時点で成果物を確認できるのです。

また、かつては海上の船の位置の特定が大変でした。風や海流、潮流により投錨しても船は流されているので、風の向きや潮が変われば船の位置も定まりません。しかしGPSの普及により船の位置が正確に確認されるようになりました。

さらに海底の地形測量も、機器の進歩によってデジタル化が進み、その精度も格段に向上しました。当社には、水深400mまでの超精密な海底地形データを取得できるワイドバンドマルチビーム測深システムや、浅海部から深海までのあらゆる用途・条件の調査ができるサイドスキャンソナーシステムなど、海洋調査測量で使用する最新鋭のデジタル機器が4台あります。マルチビームは高額な設備投資でしたが、正確な情報を成果物として納めることができるためお客様の評判が良く、信用と信頼が生まれています。これら最新型の測量調査機器の導入などにより生産性は創業時に比べ2倍近く上がり、一現場あたりの作業人数も以前より2~3割減らすことが可能になりました。

弊社では、最新の機器をできるだけ早く導入することにしていますが、導入してもすぐに使えるわけではありません。導入する最新機器は外国製品のため、取扱説明書はすべて英語です。日本製の説明書は丁寧ですが、外国の取扱説明書はアバウトなことが多く、まずは難解な英文を解読し、機器の特性をよく調べ、実験を重ねて使い方を熟知してから、準備万端で現場に行かせるようにしています。マルチビームを2007年に初めて導入したときは、翌朝の現場で使用するために深夜まで機器の動作チェックを行い、現場で無事に測量データを取得できた、との連絡を受けた時は、ひと安心しました。もしも機器が思うように動かなかった場合は工期が遅れ、工事船舶の待機費用等は全て弊社が負担しなければなりませんので、トラブルが生じないように慎重に取り組んでいます。

マルチビームの力を証明した東日本大震災

GPSは今から20年ほど前、マルチビームは2007年に導入しました。日本の民間企業としてはどの企業よりも早く導入したと思います。会社の規模は小さいけれど、機器の導入は早いんです(笑)。早く機器を導入する理由はふたつ。第一に早く活用したいからです。最新機器は導入してもすぐには使えません。現場に即した目的で使用するには機器の特性と取り扱いに熟知する必要があります。早く導入すればするほどこれが可能になります。第二に新しい機器の導入は新しい技術の導入であり、主要な顧客である官庁の受けが良いからです。

マルチビームは256本のビームを海底(構造物など)に発射し、形状を図化する機器です。この機器が威力を発揮したのが、2011年の東日本大震災でした。地震のため陸路は不通になり、大量の物資を運ぶのは海上輸送しかありません。しかし、津波により家屋や車などが海に流れ込み、船舶航行の妨げになっているので、海底障害物の状況を調査してほしいとの依頼がありました。一刻も早く被災した現場に駆け付けたかったのですが、九州にある会社なので現地の正確な情報(目的地までの交通手段、寄宿舎の手配、調査台船の確保など)がつかめず、まずは東北地方にある協力会社にマルチビーム一式を先に送り、技術者は現地の状況を見極めてから送り込むことにしました。結局、弊社の技術者が現地に乗り込んだのは2か月後の5月連休明けでした。最新鋭のマルチビームにより、津波で港に溜まったガレキなどの漂流物の調査、海底地形測量を行い、すべての漂流物を撤去して安全に船舶が航行できることに協力できました。この時期を境に、マルチビームは自衛隊などの官庁や民間企業に多く保有されるようになりましたが、すぐに使いこなすことが困難であり、問い合わせなどをたくさんいただきました。弊社がいち早くマルチビームを導入して技術的に使用方法を確立していたので、お役に立つことができました。

コロナ禍のずっと前からテレワーク

先ほど申した通り、海底の測量データを現場の技術者から事務所に送り、データをリアルタイムで解析しています。思えば、これが弊社のテレワークでした。海上の現場と陸上のオフィス、別々の場所で同時進行により分業するテレワーク。そのため、現場と事務所のコミュニケーションはとても重要でした。解析したデータを逐次現場の技術者へ送信し、データが不明瞭なものや未取得のものはすぐに連絡して再度測量を行います。常に良い海象条件とは限りませんので、台風などが襲来する季節などは、現場の稼働率も悪く、限られた時間で満足できる成果物を顧客へ提供できるように日々、精進しています。

(下)につづく

この記事について

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