まもなく創業100周年の老舗こんにゃくメーカーが新工場を設立しさらなる躍進を図る 【株式会社 古野食品】(下)遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役 古野秀典氏

昭和45年福岡県鞍手郡(現・宮若市)生まれ。
調理師修業を経て家業のこんにゃく製造の道に入る。
その後先代社長の父をサポートしながら業績を伸ばし、平成22年に社長就任。
近年の急成長で注目を集める若手経営者。
趣味は料理で調理師免許も持っている。

ヒット商品となったヘルシーな麺シリーズ。
こんにゃく作りの技術が生かされている。

株式会社 古野食品
創 業:大正10年
事業内容:こんにゃく製品ほか食品の製造販売
本社所在地:福岡県宮若市
電話:0949-32-0056
ホームページ:http://www.furunofoods.co.jp

福岡県宮若市で4代続くこんにゃくを中心にした食品製造会社。
平成16年に有限会社、22年に株式会社化。平成29年に工業団地内に最新設備を備えた新工場を建設。近年はこんにゃく麺や野菜具材セットなど、新分野の商品も売上を伸ばしている。

)からのつづき

一歩先を考え新商品開発に着手

こんにゃくは肉や魚などメインのおかずとなる食品とは違い、食材自体の味や栄養も控えめで、食卓ではあくまで脇役的な存在だ。「本当に地味なんです。おでんに大根や玉子が入ってないと『そりゃないよ』となりますが、こんにゃくがなくても『まぁいいか』でしょ」と古野社長も自虐を込めて笑う。独特の匂いが苦手という人も多く、若い層にはなかなか広がっていないのが現状だ。

しかし一方で長所も多い。成分の95%以上が水分なので、他の食品に比べ極端にカロリーが低く、ダイエット食にはぴったりの食材だ。また食物繊維が非常に豊富(板こんにゃく 1枚にレタス1個分)なため、腸内のコレステロールや脂肪を絡め取って体外に排出する働きを持っている。「昔からお腹の掃除屋さんと言われていて便秘にも効果的。それから肌に良いとされるセラミドという物質が、あらゆる食品の中で最も豊富なんです。まさに女性の味方のような食品なんですよ」

しかし、良いとわかっていても市場にあるこんにゃく料理のレパートリーは限られており、色めも地味でパッとしないものばかり。どうすればもっと気軽に食べてもらえるか。ここで役に立ったのが料理の腕前と鋭敏な舌である。幼少期に実母を亡くした古野社長は早くから調理を覚え、その面白さに興味を持っていた。さらに短い期間だがフランス料理を学んだ経験から味覚やセンスがさらに磨かれていたのだ。

最初に商品化したのは「豆乳麺」だった。こんにゃくを麺のように加工することは他社も行っていたが、小麦粉麺の柔らかくしっとりした歯ごたえに比べ、こんにゃくはプリプリした硬い食感なので食べると差が大きかった。このため古野社長は主原料を豆乳に変え、こんにゃく粉をブレンドして麺を作ることを思いついた。これを 特殊な方法でさらに柔らかく仕上げ、小麦粉麺に近い食感を持つ麺が誕生したのだ。カロリーは小麦粉麺のおよそ10分の1。柔らかくてダシもよく絡み、うどん感覚で美味しく頂くことができる。

時代が求めるヘルシーな食品を提案

1パック200グラムでわずか8キロカロリー。さらに糖質はゼロなのに食物繊維と大豆イソフラボンが豊富という新商品は、営業先に持って行くと担当者が身を乗り出して説明を聞いてくれた。そこに古野社長自身の「これを食べ続けたら半年で15キロも痩せましたよ」という経験談が説得力があって、取引のなかった店の棚にも次々に並び、売上も右肩上がりで伸びていった。

「冷たいまま麺つゆをかけるだけで美味しいし、沖縄ではそうめんチャンプル用によく売れています。ひとつの商品がうまくいくと『古野食品さんはいい物を作るんだね』と信頼感が高まって、メインのこんにゃくも置いていただけるようになるんですよ」と古野社長。これまでは新しいお客さんを訪問すると売価や掛け率だけを比べられていたが、新しい商品を開発することで商談のポイントが変わり、取引がスムーズに進むようになった。

豆乳麺の成功を受けて同社では「うどんこんにゃく」「そうめんこんにゃく」もラインアップに加えた。この二つは豆乳麺の原料配合に少し手を加え、細麺に仕上げた商品。ツルツルと喉ごしが良いので、冷やして食べるのにちょうど良い商品だ。夏場に麺類ばかり食べていると意外に太りやすいもの。週に何回か食事をこの麺に変えると「ほぼ確実にダイエット効果が期待できます」とのことだ。

切った状態でパックされた野菜具材セット 。
調理時間が短縮できて美味しいと評判だ。

ヘルシー麺シリーズに続いて開発したのは「きんぴら」「豚汁」「筑前煮」3種類の野菜具材セットだ。これらはそれぞれ野菜の皮をむいてカットし、火を通した状態でパックになっている商品で、袋から出して炒めたり煮たりするだけで手早く調理できるようになっている。「共働きや高齢者の世帯が増える中、昔のように料理に手間や時間をかけられる人は少なくなっています。そういった方々の苦労を少しでも軽くしつつ、美味しくてヘルシーな食事をしてほしいと思って作りました」と古野社長。

新工場から生まれるアイデア商品

野菜具材シリーズは製造を協力メーカーに委託しているが、味の決め手となる調味タレは古野社長が自ら試作と試食を重ねて決めた。自然で優しい味を目指したことは、食べてみるとはっきり伝わってくる。さらにこのシリーズの隠された長所は「時短にはなるが、ひと手間かかる」こと。忙しい母親たちでも、レンジで温めるだけの惣菜や冷凍食品の使用には罪悪感を持ってしまうことが多い。しかし野菜具材シリーズは煮る・炒めるというひと手間が加わるため「手間をかけた」という自己満足感が得られるのだ。このシリーズの参考売価はいずれも2〜3人分で270 円。幅広い層に家庭の食事を楽しんでもらいたいという気持ちが込められている。さらに最近では本葛粉をブレンドしたコシが強く煮崩れしにくい「生くずきり」を発売し、こちらも好調な売れ行きが続いている。

こうして長年の努力が実を結び、現在取り扱い品目は約50種類に拡大。売上は古野社長が入社した頃に比べ、約20倍にまで伸びている。社員数も22人に増え、以前の倍の規模の新工場を構えた現在は、宮若市でも注目の存在になっている。(取材時)

新事務所と工場は広角レンズでも収まらない大きさ。
奥様のやよいさんも経理を担当して会社を支えている。

「この新工場も飯塚信用金庫さんから融資を受けて建てることができました。毎年の材料を買う運転資金もお世話になっていますし、まだまだ設備投資も必要になるので、これからも頼りにしています」と、信用金庫との強い絆はこれまでも、これからも変わらない。

小さな町のこんにゃく店を筑豊地区でも1、2を争う大メーカーへ成長させた古野社長。現在の成功に導いたカギは、商品開発と営業両面の地道な努力と、未来を切り開こうとするバイタリティー。今後は同業者などと横の繋がりをつくってグループとして中心的な活動も目指している。現在考えている計画は「今の生活スタイルに適応できる簡便商材を広げていきたい。 こんにゃくを使ったコンビニ用お惣菜商品を考えています」とのこと。発売前なので詳細は伏せるが、便利で食べやすい商品になりそうなアイデアであった。美味しく、ヘルシーで安全な商品を次々に生み出す古野食品。今後の発展がますます楽しみな会社である。

おわり

この記事について

元気な中小企業は、地域の宝!
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