真面目に作った「どら焼き」が伊万里で評判のお菓子に 佐賀の隠れた逸品を広く世界に伝えていきたい 【小嶋や】(下)遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役 小島安博 氏
取締役社長 小島久美子 氏

安博代表は昭和25年佐賀県伊万里市生まれ。
建設関係の会社を経営した後、現役引退を撤回して久美子社長とともに小嶋やを設立。
久美子社長も伊万里市出身。
百貨店勤務中に結婚、退職後に安博代表の会社に入り、夫婦二人三脚で小嶋やを軌道に乗せ、さらなる成長を目指している。


ラベルに統一感を持たせることで、どれを組み合わせてもギフトにしやすい。

小嶋や
創 業:平成29年
事業内容:食品の製造販売
本社所在地:佐賀県伊万里市
電話:0955-22-6711
ホームページ:https://imari-kojimaya.shop-pro.jp

佐賀地域の農産品をインターネット等を通じ全国に届けるため平成29年に起業。伊万里市郊外の店舗で販売するどら焼きが評判となり、地域の話題となっている。パプリカドレッシングなど新商品も好評で、今後も成長が期待されている。

)からのつづき

好スタートの中でもさらに商品をPR

周到に準備を重ねて開店の日を迎えたが、反響は予想を上回るものだった。人通りのなかった裏通りに賑わいが生まれ、1日200〜300個限定のどら焼きは開店以来ずっと完売が続く人気ぶり。当初の狙いであった伊万里産のお茶や麦、米なども右肩上がりで注文が増え続けている。

お店が順調に船出したことで、生産農家や関係者に還元できたことは嬉しかったが、さらに思わぬ効果も生まれた。それは唯一の社員として雇った18歳の青年K君のこと。 K君は安博代表の友人の子で、自分に合う仕事が見つからず家にいたが、安博代表の誘いで働き始め、主にどら焼きの生地作りを担当することになった。すると繊細で真面目な性格が幸いしてたちまち腕を上げ、小嶋やにとって重要なスタッフに育っていったのだ。自信をつけたK 君は表情も明るくなり、1年間無遅刻無欠勤を続けている。この成長している姿にご両親も大いに喜び、小島夫妻に感謝している。まさに小説『あん』と 同じように、どら焼き作りがひとりの青年の人生を変えてゆくというストーリーそのものだ。


昭和レトロ感の漂うお洒落な店舗 。随所に久美子社長のセンスが光っている。

実店舗で評判となったことにより、当初の狙い通りインターネット販売でも動きが現れ始めた。どら焼きとお茶を合わせたギフトセットが、自社の通販サイトやアマゾンで少しずつ注文が入るようになり、同時に販売している麦やハチミツ、お米も売れ始めた。

初年度としては上々の業績を挙げる中でも、安博代表は知名度のアップに余念がなかった。開店した月に行われた「第4回しんきん合同商談会」にさっそく出展。そこで、ネット通販最大手I社や福岡のテレビ放送局から声がかかり、その後商談がまとまって、こちらも注文が伸び始めている。その後も伊万里市内はもちろん、佐賀や福岡、さらには東京まで1年間で7〜8回ものイベントに出て商品をPRした。「目的を持った人が集まる場所は効果が高い」と話す安博代表。そうした努力の甲斐あって、メディアやバイヤーからの問い合わせも増えている。

隠れた逸品にも注目が集まってきた

このところ特に注目を集めているのが、「パプリカドレッシング」だ。店舗では令和元年9月1日から、通販では10月1日から販売を始めた。これは小嶋やが神埼市の西九州大学と共同で開発したもので、産学連携で生み出されたことから新聞・ラジオ・テレビ・ニュースで報道されるなど話題となった。原料のパプリカは同じ伊万里の農業法人・(株)アース マインド伊万里から供給されるが、それには傷や規格の問題で出荷ベースに乗らない規格外商品を活用している。もともと同社と安博代表とはつながりがあり、廃棄ロス問題を知った安博代表がドレッシングを提案。開発資金はクラウドファンディングを活用して集めた。
こちらも味見をさせていただいたが、自然な甘さと酸味が程よく混じり合い、深みのある味わいが感じられた。塩や砂糖は一切使用せず、梨やハチミツで甘さを引き立て、素材本来の味を生かしている。


新商品のドレッシングはREDとYELLOWの2種類。 パプリカの風味が楽しめる。

「パプリカは栄養価が非常に高い上、見た目もカラフルで食卓を引き立てる効果もあるので、ぜひ多くの人に食べていただきたい」と安博代表。早くも問い合わせが増えつつあり、全国に出荷される日も遠くなさそうだ。

一方でドレッシングやどら焼きに入っているハチミツも代表の自慢の逸品。こちらは 国産ではなくアルゼンチン産だが、現地の養蜂家は佐賀県出身で、以前から贈答品に使っていた。アルゼンチンのハチミツは天然の花蜜をゆっくり熟成しているため、今の国産ハチミツよりも品質が良く、安全性も高い。舐めてみると確かに風味が豊かで、ベタつかないさっぱりした甘さが印象的である。この商品も通販サイトで人気が高まりつつあり、30個まとめての注文もあるという。

そしてどら焼きのきっかけとなったお茶も、伊万里市の西部、国見岳の斜面に広がる 茶畑「日南郷(ひなたごう)」にて、無肥料・無農薬の自然栽培で作られる貴重な一品だ。寒暖差の大きな気候から豊かな香りが生まれ、これを小嶋やでは緑茶と和紅茶の2種類で商品化している。

お店のスタイルは3年で完成させたい

安定して売れている商品はお米とモチ麦だ。お米は提携する農業法人の主力商品である伊万里産「さがびより」。育苗から収穫、保管、精米までを一貫して管理しているため、モチモチで美味しい白米を安心して味わうことができる。
モチ麦も同じ農業法人が作る伊万里産。「ダイシモチ」という大麦の一種で、こちらも粘りのあるモチモチ・プチプチとした食感があり、お米に混ぜて炊くと、よくある雑穀米よりずっと美味しいとファンが多い。

このほか最近販売を始めたのはオイルと果実酢だ。オイルはほとんど市場には出回っていない貴重な国産の菜種油100%。とても香りが良いので、オリーブオイルのように野菜等にかけても美味しいが、一番のオススメは炒め物だそうだ。「少し加えるだけで、野菜炒めでも目玉焼でも別物になりますよ」と安博代表。
ゆず・生姜・かりんの3種類で売り出した果実酢は、4倍程度に薄めて飲む飲料用。180日かけて熟成した果実酢にハチミツをブレンドし、健康志向の人をターゲットにしている。

こうして起業から1年で商品アイテムは次々に増え、小嶋やは今や立派な食品ブランドに成長した。会社としての信頼感も確実に高まり「嬉しいことに『小嶋やが売るのならきっと美味しいだろう』と期待するお客様が増えています」と語る。「ここまではほぼ思惑どおり。この店は3年で完成させたいと思っているので、それまでに今の商品で売上を伸ばしながら、店頭とギフト、ネット販売のバランスを同じくらいにしていくのが当面の目標です」という。その後は久美子社長が前面に立つことになるが、今も実務の多くは久美子社長が担当し、センスを生かしたプロデュース能力にも秀でているため、安博代表は全く心配はしていない。

小嶋やは一見すると伊万里の街外れにある小さな店だが、クオリティが高い商品を揃えており、大きなポテンシャルを持っている。実店舗とネット販売の両方に力を入れながら、地域の経済や人を元気にしたいという小島夫妻の挑戦を、伊万里信用金庫はこれ からも応援していく。

おわり

この記事について

元気な中小企業は、地域の宝!
地域経済を牽引する数多くの中小企業のなかから、福岡・佐賀・長崎の元気企業を紹介します。
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