真面目に作った「どら焼き」が伊万里で評判のお菓子に 佐賀の隠れた逸品を広く世界に伝えていきたい 【小嶋や】(上)遊撃する中小企業 〜がんばってますけど、何か?

地域企業

代表取締役 小島安博 氏
取締役社長 小島久美子 氏


少し年齢差がある小島夫妻。しかしお互いに敬意を払って相手を尊
重する仲の良いご夫婦だ。

安博代表は昭和25年佐賀県伊万里市生まれ。
建設関係の会社を経営した後、現役引退を撤回して久美子社長とともに小嶋やを設立。
久美子社長も伊万里市出身。
百貨店勤務中に結婚、退職後に安博代表の会社に入り、夫婦二人三脚で小嶋やを軌道に乗せ、さらなる成長を目指している。

小嶋や
創 業:平成29年
事業内容:食品の製造販売
本社所在地:佐賀県伊万里市
電話:0955-22-6711
ホームページ:https://imari-kojimaya.shop-pro.jp

佐賀地域の農産品をインターネット等を通じ全国に届けるため平成29年に起業。伊万里市郊外の店舗で販売するどら焼きが評判となり、地域の話題となっている。パプリカドレッシングなど新商品も好評で、今後も成長が期待されている。

佐賀の農産物のネット通販のため会社を設立

佐賀県の伊万里市郊外にできたお店が、どら焼きの美味しさで評判となっている。場所は長崎県との境に近い市内西端の山代町。国道204号から一歩入った静かな通りには今も趣のある建物が残っており、タイムスリップしたような懐かしい気分になる。「小嶋や」はそんな古い建物のひとつを改装して作られた店舗。昭和期の住宅を現代的な和風にアレンジし、レトロで親しみやすい雰囲気を作り出している。

経営しているのは小島安博氏・久美子氏のご夫婦。久美子氏が社長で、安博氏が経営を舵取りする代表取締役という位置づけだ。2人が小嶋やをオープンしたのは、取材日からちょうど2年前の平成29年10月1日のこと。 2人ともそれまで食品製造の経験はなかったが、「佐賀の優れた農産品を全国へ届ける」ことを目的に会社を設立した。

安博代表は昭和25年生まれで、前職も企業の経営者。33歳の時に伊万里市で建物の鳥害対策を専門とする会社を起業し、以後33年にわたり堅調に業績を保ってきた。平成28年3月に会社を譲渡した後は、人生をゆっくり楽しもうと考えていたという。久美子氏も安博氏の会社で働いていたが一緒に退職し、海外留学して語学スキルを磨いていた。

そんな時、伊万里で意欲的に農業に取り組む農業法人から安博氏が相談されたのが、「伊万里産の優れた農産物を、ネット販売で世に広げたい」というもの。伊万里市は一般的に焼物の町というイメージを持たれているが、豊かな自然環境を生かした農業も盛んで、伊万里梨や伊万里牛など質の高いブランド農産品を生み出している地域でもある。興味を持って調べてみると、対象となる米や麦、お茶などの商品はどれも品質が高く、それぞれに歴史やストーリーがあって面白い。

「けれど相談してきた農家さんは、作ることは上手だが販売の方は苦手で、そもそも売ることに専念する時間がなく、私でお役に立てるならやってみようと思い、新しい挑戦を始めることにしました」

小説『あん』から浮かんだ、どら焼き

インターネット通販はスタート時の投資が比較的少なく済み、新規参入のハードルも低いのが特徴であるが、安博代表は簡単には考えなかった。

「ネット上に農産物は星の数ほどありますからね。サイトに出しただけじゃ注文なんかきませんよ。見てもらうには何かきっかけがないとダメ。メディアで取り上げられるとか、イベントに出てPRするとか、様々な仕掛けを行って話題を作ることが必要なんです。実店舗を構えるのもそのうちのひとつ。そこで一定の評判をとれば、検索して探してもらうきっかけになるし、お店があることで安心感も高まるというわけです」

幸い安博代表の実家が空いていたので、市街地から離れてはいたが、伊万里信用金庫の融資を受けて店舗に改装することにした。しかし米やお茶を販売する店は伊万里市内にも多い。その中で「わざわざ訪れていただくきっかけになる商品を」と考えていた時、安博代表の頭に浮かんだのが「どら焼き」であった。

「ずっと前にドリアン助川さんの小説『あん』を読んで感銘を受けたんです。ハンセン病をテーマにしたとてもいい本で、亡くなった樹木希林さんの主演で映画化もされました。その物語で鍵となっていたのがどら焼きだったんです。どら焼きは甘くて和風なので、お茶と併せて販売するのにぴったりだと思いました」

小説にレシピも載っていたので、まずそれを参考にしながら試作を開始。何よりこだわったのは材料だ。小麦粉や卵は地元の契約農家で採れたものを使い、砂糖は四国産の高級砂糖・和三盆、小豆は北海道の十勝産、ハチミツはアルゼンチン産と、納得のいくものを選び抜いた。


看板商品のどら焼きは小ぶりで食べやすく、上品なサイズ。切ると生地の断面にスジが現れるのが美味しく膨らんだ証拠だ。

目指したのは昔ながらの優しい味わい。農薬を使わず育てたお茶と一緒に販売するため、保存料や着色料、甘味料など化学的なものは使わず、自然な風味を目指すことにした。

最初のうちは生地が煎餅のように固くなるなど失敗の連続だったが、繰り返すうちに少しずつコツをつかみ、企画から約1年をかけてようやく自信を持って販売できるものが完成した。

自慢の「どら焼き」をいただいてみると、なるほど思わず感嘆の声が出るほど美味しい。
餡は優しい甘さで小豆の風味があり、生地もふんわり柔らかくて、こちらも甘さ控えめで素朴な味わいだ。

「秘密は何もありません。材料は国産から厳選していますが、シンプルな材料で手を抜かず丁寧に作るということにつきますね」と安博代表。お話から真面目な人柄が伝わってくる。

開店準備は2人の経験を生かしながら

開店に向けての準備も、起業経験を生かし計画的に行った。餡は主に安博代表が、生地は久美子社長が製造を担当していたが、新たにパートを募集して体制を整えた。

看板やパッケージのロゴは、書道の上手な久美子社長が自らデザイン。親しみやすいが上品でオシャレ感のある店舗を目指した。こうしたプロデュース分野では、かつて勤めていた百貨店の経験が役に立った。さらにお年寄りや女性でも食べやすい大きさや、贈答品にも使えるパッケージなど、商品の企画を進めていった。

安博代表の方は開店日よりずっと以前から営業宣伝に力を入れた。まだどら焼きは完成していなかったが、開店の半年ほど前から、市内・市外を問わず催しがあると駆けつけてお茶やモチ麦、ハチミツなどのサンプルを配って試食を促し、話題作りに励んだ。全く経験のない分野で、しかも市街地から離れた裏通りへの出店であれば、最初は少しずつ売り始めて、様子を見ながら販売数や商品アイテムを広げていきそうなものだが、最初から経費をかけて一気に知名度を上げる戦略をとったのだ。

「そこは長年かけて身につけた経営感覚ですね。3年間かけて使う経費があるとすると、それを最初の1年間で使えば結果はその分早く出ます。1年目から顧客を獲得しておけば、その後もずっと買っていただける。すると資金が良く回りますから、後が楽になるんですよ」と話す安博代表。さすが33年間も会社を経営してきた方の言葉には説得力がある。

(下)につづく

この記事について

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